35, 反省

 

 

 

 
「ディアッカ!ここは寮なんでしょ?何する気よ?!」
ミリアリアは、ディアッカに組み敷かれながら必死に抵抗し、なんとか体を起こすことに成功した。
 
 
「…あれ。スタンガン?」
 
 
頭上から注がれる、ディアッカの鋭い視線。
ミリアリアは目を逸らした。
「…うん。そう。」
「貸して。」
ミリアリアは観念し、素直にポケットにあったスタンガンをディアッカに渡した。
 
「随分と高性能なモデルじゃん。で、出処は?いつからこんなの持ってたんだよ?」
「あの…。昔、もらったの。ラス、ティに。」
以前愛称で呼んで機嫌を損ねたことを思い出し、慌ててフルネームを口にする。
「は?ラスティに?」
意外だったのだろう。ディアッカの眉が上がる。
 
 
「…ダストコーディネーターの取材中、私がコミュニティで生活してたのは知ってるわよね?」
「…ああ。あいつもそう言ってたな。」
「その時、護身術みたいなものとか、いろいろ教えてくれて…。
女一人で戦場や紛争地域を取材するなら、これも持っておけ、って。」
 
 
ディアッカは手の中に収まる薄型のスタンガンに目を落とした。
あいつ、素人の、しかも女になんてモノ持たせんだよ!
今度本人に会ったら、絶対一発殴ってやろう…。
ディアッカは内心そう決心し、懐にその物騒なものをしまった。
 
 
「使ったのは?今回が始めて?」
ミリアリアは上目遣いでディアッカを見つめ、ふるふると首を振った。
 
「ヴァレンタインの廃コロニーで、一度だけ…」
「…とりあえずこれは俺が預かるから。いいな?」
ミリアリアはこくりと頷いた。
 
 
 
「…あの、ディアッカ?」
ディアッカは、無言でミリアリアを見下ろしている。
その紫の瞳からは、何の感情も読み取れない。
 
「…何回言っても、結局聞きやしねぇ…」
 
「…え?」
ディアッカの発した呟きは、ミリアリアの耳まで届かない。
思わず首を傾げたミリアリアの両手首をディアッカが掴み、そのまま体ごとベッドに押し付けた。
「痛い!ディアッカ?!」
 
 
 
「…もうお前、お仕置きな。」
 
 
 
「え?ちょ、ん…!」
驚いたミリアリアが声を上げると同時に、ディアッカはその声ごと唇を塞いだ。
「ん、ん…!」
おしおきって、何?!
動揺したミリアリアはじたばたと抵抗するが、ディアッカの巧みなキスにだんだんと頭が朦朧として行く。
ミリアリアは、ディアッカの器用な指が軍服のボタンを外していくのをぼんやりと感じていた。
 
 
 
 
***
 
 
 
 
「…ミリィ?」
「…ん…」
ディアッカは隣に力なく横たわるミリアリアを胸に引き寄せた。
ミリアリアはまだ朦朧としているのか、ディアッカにされるがままになっている。
華奢な体を優しく抱きしめると、ミリアリアもかすかに身じろぎ、ディアッカの胸に体を摺り寄せた。
 
「…メール、すげぇ焦った。お前まで、シホみたいに襲われてたらって思って…」
「…うん。ごめんなさい…また、考えなしなこと、しちゃって…反省してるわ。」
ディアッカの腕に力がこもった。
 
 
「…あいつらの取調べ、俺がやってるんだ。イザークにはさすがにやらせられねぇし、な。」
 
 
「そう、なの…」
 
シホを発見し、病院まで運んだのは自分とディアッカだ。
ある意味適任かもしれないが、あの日のディアッカの苦悩を知るミリアリアには、その任務がとても酷なものに思えた。
「聞けば聞くほど、虫酸が走って…。自分を抑えるのに苦労した。
同じ男として、俺はあいつらを許せない。」
「うん…。」
ディアッカは、腕の中のミリアリアにそっと唇を落とす。
 
「それでも、さ。」
 
「え?」
「もしそんなことになっても、俺はお前を離さないから。」
「ディアッカ…」
「もちろん、相手にはきっちり制裁するけどな。…生まれてきたことを後悔する位に。」
ディアッカの瞳に一瞬だけ、残忍な色が浮かぶ。
 
 
「だから、たとえ何があってもお前は戻ってこいよな。俺のところへ。
俺はどんなお前でも受け止める。それだけ信じていてくれるか?」
 
 
ミリアリアは、ふわりと柔らかく微笑んだ。
「…うん。信じてる。」
ディアッカはその言葉に、嬉しそうに笑った。
 
 
 
「ごめんな。ちょっと、無理させ過ぎた…。」
ミリアリアは、怠い体を起こすとそのままディアッカの唇を塞いだ。
「いいの。…嫌じゃ、なかったから…」
恥ずかしかったのだろう。そのまま顔を胸に埋めてしまったミリアリアをディアッカは愛おしげに抱き寄せる。
 
「…しばらく、こうしててもいいか?」
「…ん。」
 
再び二人の唇が重なり。
そのまま二人は、身を寄せ合ったまま心地よいまどろみに身を任せた。
 
 
 
 
 
 
 
016

何より心配で、大切で、なのに張本人は相変わらず無鉄砲で。

そんなミリアリアについにキレてしまったディアッカ。

それでも最後は、甘い二人に戻ります。

後は、あの二人、ですね。

「お仕置き」についてはいつかそのうち補完作品でupしようと思います…。

 

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2014,7,16up