「カガリ様?!」
ミリアリアとオーブ総領事館に到着したカガリは、アマギの仰天した声にほくそ笑んだ。
「ラクスが用意してくれたんだ。似合うか?」
先に総領事館に着いていたキサカが溜息をついた。
「お忍びとはいえ、せっかくプラントに来たんだ。
通常の訪問では出来ないことをしたくてな。
クサナギからエアカー乗り場まではミリアリアと徒歩で来たが、誰も私とは気づかなかったぞ?」
自慢げに話すカガリに、サイは肩を落とす。
そう、カガリは本来こういう人間だった…。
ふとミリアリアと目が合う。
ミリアリアは情けない顔で微笑むと、残念そうに首を振った。
「ラクスと連絡はついたか?キサカ。」
「ああ。本日午後3時、ザフト本部の執務室にて待っているそうだ。」
「そうか!良かった!」
カガリは嬉しそうにはしゃいでいる。
やっぱり嬉しいのよね。アスランの事。
かつてディオキアで再会したアスランに頼まれ、カガリ、キラとの話し合いをセッティングし、なおかつそれに同席したミリアリアは、あの時のカガリの涙を忘れてはいない。
今度こそ本当に、二人には幸せになって欲しい。
ミリアリアは心からそう思うのだった。
「ところでミリアリア。ハーネンフースさんの様子はどうなんだ?」
総領事館内を見学し、キサカやアマギと改善点や今後の方針を話し合い。
一仕事終えたカガリをクサナギに連れ帰るべく、総領事館からザフト本部へ向かうエアカーの車内で、カガリはミリアリアにそう尋ねた。
「…うん。もう自宅に戻ったわ。会話も普通にしてるけど、やっぱりまだ本調子じゃないみたい。」
「そうか…。犯人検挙の目処も立たないのか?」
「ええ…。除隊予定だったこともあって、居場所がなかなか掴めないらしいの。
ディアッカもかなり苛立ってたわ。」
カガリはふむ、と顎に手をやり、軽く俯く。
「私がこんなことを言うのもお門違いだし無責任だと思うが…早く、立ち直って欲しいな。」
ミリアリアは目を丸くした。
「カガリ、シホさんの事そんなに知ってたっけ?」
「ジュール隊の副隊長だろう?通信でもこちらに滞在していた時でもしょっちゅう顔を合わせていたし、何よりあの凛とした雰囲気はそう簡単に忘れられない。」
カガリの言葉に、ミリアリアは病室にいたシホの姿を思い浮かべた。
日増しに会話もできるようになってきたが、感情の宿らないどこか虚ろな瞳は、大切な何かを落としてきてしまったかのようで。
やっと想いが通じ合ったはずのイザークが、シホのところに行かないのも気になっていた。
「…ほんとに、早く元気になってほしいな。大切な友達だもの。」
ミリアリアの言葉に、カガリが少しだけ切なげに微笑んだ。
ザフト本部に到着し、ミリアリアはカガリを振り返った。
「ラクスとの約束までまだ少し時間があるから、カガリは一度クサナギに戻ってて?
艦までは送るから。」
「ミリアリアは?」
カガリは伊達眼鏡を掛け直し、首を傾げた。
「アマギさんに頼まれた資料を探すの。総領事館がある土地についての書類なんだけど、ここの資料室にあるらしいのよね。」
「じゃあ、私も着いて行く」
「…そう言うだろうと思ったわ…」
げんなりと肩を落とすミリアリアに、カガリはぷぅ、と頬を膨らませた。
「なんだよ!ダメなのか?」
「ダメとかじゃなくてね…。カガリ、さっきも言ったけど、あなたはオーブの代表なのよ?
いくら変装してても、バレる時はバレるの。」
「大丈夫だ!何のための変装だよ!」
ミリアリアは、緑服に赤いフチの伊達眼鏡、髪を後ろにまとめたカガリを上から下まで見た。
「…分かったわよ。どうせラクスのところに行く時、私が案内するんだし。
そこでアスランに会うつもりなんでしょ?」
ぎく、とカガリの動きが止まった。
「ミ、ミリアリア、なんで…」
「元ジャーナリストをなめないで欲しいわね。」
目を細めてカガリを睨むミリアリア。
カガリは小さくなるしかなかった。
「じゃ、行きましょ?資料室の使用許可はもう貰ってるから。」
ディアッカに、一応連絡しておいた方がいいかしら?
そう思ったミリアリアだったが、忙しいディアッカにこれ以上負担をかけたくはない。
本部内なら、ある意味一番安全だろうし…。
「ミリアリア、ほら、行くぞ!」
「ちょっと。案内するのは私でしょ?」
ミリアリアはくすりと笑って、カガリを促し歩き出した。
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アスランへのサプライズ、ラクスとカガリはきっと事前に相談していたんだろうなぁ、と思います。
そして、シホの事を心配するカガリ。
シホの存在は、ジュール隊にとってなくてはならないもの、なんでしょうね…。
2014,7,15up