24, 約束 1

 

 

 

「ディアッカ、車が来たよ。」
キラが座り込んだままのディアッカとミリアリアに声をかけた。
 
「あとミリィ、ラクスから連絡が入ってる。今受けてもらえる?」
「ラクスから?…うん、いいけど…」
ミリアリアは携帯を受け取ると、立ち上がろうとするディアッカをキラに任せて少し離れたところへ移動した。
 
 
ディアッカの目が、ミリアリアの左手を捉える。
そこに、ディアッカが贈った指輪は、無かった。
 
 
「…分かったわ。…ええ、大丈夫。それじゃ。」
 
ミリアリアはキラに携帯を返した。
「ディアッカを早く病院に。下まで私も一緒に行くわ。」
ディアッカはミリアリアに訝しげな視線を送った。
「…下まで、って…」
ミリアリアはキラに手を貸されて立ち上がったディアッカを見上げた。
 
 
「…私は、今は行けない。後から必ず行くから、先に行って?」
「なんでだよ?」
ディアッカは納得がいかない様子だ。
「しなければいけないことを、済ませるの。大丈夫、朝までには行けると思うから。約束するわ。」
そう言ってミリアリアは笑った。
しかしその笑顔はどこか強張っており、ディアッカの胸に不安が広がる。
 
 
「お前も、一緒に来いよ。」
ディアッカの口から出た言葉に、ミリアリアが困ったような表情になる。
「…キラ、先に行っててくれる?私がディアッカを車まで連れて行くから。」
キラは優しい瞳でミリアリアに頷いた。
 
 
 
「…なぁ、何で残るんだ?親父に何か言われたのか?」
ディアッカの問いかけにも、ミリアリアは俯いたまま無言を貫く。
階段ではディアッカに負担がかかると判断したのか、ミリアリアはディアッカを支えながらエレベーターの前に立った。
「…後で、説明する。ごめん。」
ミリアリアはディアッカを見ずに、エレベーターのボタンを押した。
その手を目で追うディアッカは、ミリアリアの手首に残る赤い痕を見逃さなかった。
途端、ディアッカの脳裏に先日の行為が蘇る。
 
「ミリィ…おれ…」
エレベーターの扉が開く。
ディアッカの言葉は途中で遮られ、二人はそのまま乗り込みドアが閉まる。
「ねぇ、ディアッカ。」
行き先のボタンを押しながら、ミリアリアが小さな声でディアッカを呼んだ。
「なに?」
「…私は、ディアッカの婚約者、だよね?」
ディアッカは壁に片手をつき、空いている手でミリアリアを振り向かせ、その顔をそっと上向かせた。
 
 
「あたりまえだろ?他に誰がいるんだよ?」
その言葉に、ディアッカの顔をじっと見つめるミリアリアの碧い瞳が揺れた。
 
 
エレベーターが一階に到着した。
そしてドアが開く直前。
背伸びをしたミリアリアの唇が、一瞬ディアッカのそれに重ねられ、すぐに離れた。
 
「…これで、頑張れる。」
 
「ミリアリア…?」
「ディアッカ!早くしないか!」
ミリアリアに手を貸そうと走り寄るイザークの声が、二人の会話を遮った。
「イザーク!ディアッカをお願い。」
ミリアリアがそう声をかけ、そっとディアッカから離れた。
「それじゃ、ね。ディアッカ。」
「あ、おい!」
ディアッカの目の前で、ふわりと微笑むミリアリアを載せたエレベーターのドアが閉まった。
 
 
「ディアッカは行ったかね?」
館長室に戻ると、アスランを従えたタッドがミリアリアを待っていた。
「…お父様、少しだけ時間をいただけますか?部屋から取ってきたいものがあるんです。」
そう言うとミリアリアは走って自室に戻った。
 
 
 
ディアッカの処置は1時間ほどで終了した。
「気分はどうだ、ディアッカ」
病室ではイザークとキラがディアッカの帰りを待っていた。
「…ああ、麻酔が効いてるから痛みはねぇよ。切れたらどうだかわかんねぇけどな。
俺の体質的にも、回復にはそんなに時間もかからないらしい。歩行に問題がなくなれば退院だってさ。」
「そうか。それは良かった。」
 
「…ねぇ、ディアッカ。僕との約束守ってくれた?」
キラが突然ディアッカに話しかけた。
「…それなりには。っつーか、そこまでじっくり話なんて出来なかったし、な。」
「ふーん。そうなんだ。…じゃあさ、僕から特別に、話のきっかけを一つ提供してあげるよ。」
 
そう言うとキラは室内に設置された大型のテレビを付けた。
どうやら何かの記者会見が行われているらしい。
 
そしてそこには。
 
「ミリアリア…親父…?」
テレビに映る会見の席には、ラクスにオーブ総領事館のアマギ館長。
その隣にはタッド・エルスマン。
 
そして、オーブの軍服を纏ったミリアリアが座っていた。
 
 
 
 
 
016
 
ミリアリアの覚悟。それは、自分の出来ることでディアッカを守ること。
 
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2014,6,16up