21, 襲撃

 

 

 
 
イブまであと数日。
プラントの街には、クリスマスムードが漂っていた。
ディアッカに抱かれてから1週間が経ったが、ミリアリアは今だ別邸には戻らず、総領事館で生活していた。
 
 
「きれい…」
 
仕事が終わり、領事館内にある自室に戻ったミリアリアは、窓から見えるイルミネーションに見入っていた。
本当なら、今頃はディアッカと婚約発表や記者会見の打ち合わせをしている時期だった。
 
「…ちゃんと、ご飯食べてるかな…」
 
自分自身の事は棚に上げ、ミリアリアはそんなことを呟いた。
早く戻らなければ、とは思っていたものの、あんな事になってどのような顔でディアッカに会えばいいか、ミリアリアは分からずにいた。
 
 
「逃げてるだけじゃ、ダメよね…」
 
ミリアリアは窓を閉め、携帯を手に取った。
イザークに様子を聞いてみよう。
そして、差し入れでも持って行ってもらえるか頼んでみよう。
そう考え、イザークの番号を表示させて通話ボタンを押した瞬間。
 
 
領事館内に設置されたセキュリティの警報が、突如激しく鳴り響いた。
 
 
 
「お前も大概意地を張るな。」
「…体調が悪かったんだよ。」
イザークはディアッカからの連絡を受け、別邸を訪れていた。
「で?何の用だ?」
イザークの言葉に、ディアッカは目を泳がせた。
 
「…あいつ、今どこにいる?」
「ミリアリアの事か?」
「他にいねぇだろ。」
ふてくされた表情のディアッカに、ついイザークは苦笑した。
「気になるか?」
「…別に?ただ一応、居場所くらい知っとこうと思っただけだ。」
その時、イザークの携帯が鳴った。
着信画面を見たイザークは、ディアッカをちらりと見ると通話ボタンを押した。
 
 
『イザーク!もしもしイザーク!?』
ミリアリアの慌てた声が、イザークの耳に飛び込んできた。
「どうした!?何か…」
『誰かが総領事館内に入ってきてるの!警報が鳴っていて、下でガラスの割れる音がしたわ!』
「何だと?!」
『どうしようイザーク、多分すぐここにも…きゃあっ!』
「ミリアリア!おい!」
その言葉に、ディアッカが弾かれたように顔をあげた。
 
 
 
『…ディアッカ・エルスマンか?』
ミリアリアの悲鳴の後沈黙が続き、不意に男の声が聞こえてきた。
「…いや、ザフト軍ジュール隊、イザーク・ジュールだ。貴様、何者だ?」
『…エザリア・ジュールの息子か?これはまた…』
 
なぜ母上の名がここで?
イザークは平静を装い、男に問いかけた。
 
「もう一度聞く。貴様、何者だ?なぜオーブ総領事館の中にいる?」
『…エザリア女史の息子なら、分からんかね?』
「何の話だ?」
『私はセナ・リヒテル。
君の母上と共に、ザラ議長と先の大戦を戦ったものだ。』
イザークの目が見開かれた。
 
「セナ・リヒテル…?」 
 
『我々は、ザラ議長の思いに賛同し、今なおその意志を継いでいる。』
「…だから、オーブ総領事館を襲撃したと?」
『プラントにこのようなものなど必要ない。
ナチュラルと馴れ合うなど、コーディネイターとしてあってはならぬ事だ。』
 
 
イザークは、汗で滑る携帯を握り直した。
ミリアリアが人質に取られている以上、下手に刺激する事だけは避けたい。
「…貴様らの目的は何だ。」
『我々の要求は二つ。在プラント、オーブ総領事館と職員をプラントから追放すること。
そしてオーブとの国交断絶だ。』
「断る、と言ったら?」
『この女を殺す。』
迷いのない言葉に、イザークは息を飲んだ。
 
『ナチュラルの汚らわしい血をコーディネイターの血と交わらせるなどもってのほかだからな。
エルスマン議員も、何をとち狂ったのか…。
それともこの女、そんなに「善い」のか?』
通話口の向こうからミリアリアの悲鳴が聞こえ、イザークは声を荒げた。
 
「やめろ!その女性に手を出すな!」
ディアッカが驚いた顔で、イザークを見た。
 
『…3時間後に、またこの携帯で連絡をする。
それまでに、エルスマンの息子やラクス・クラインとよく話し合うんだな。』
 
その言葉を最後に、通話は切られた。
 
 
「…おい、イザーク。今の話…」
イザークはディアッカを振り返った。
「すぐに軍服に着替えろ。本部に向かう。」
「は?」
イザークは声を荒げた。
 
「ミリアリアのいる総領事館がザラ派に襲撃されたんだ!
お前の婚約者として、彼女が人質になっている!急げ!!」
 
 
ディアッカは身を翻し、自室に駆け込んだ。
なぜこんなにも焦り、心が乱されるのかは分からなかった。
 
 
 
 
016
 
戻る  次へ  text

 

2014,6,16up