ミリアリアはそっとタッドを振り返った。
知られて、いる?
ディアッカが話した?
「この後、何かご予定はありますかな?」
「この後…ですか?」
ミリアリアは戸惑った。
「私はこう見えてなかなか多忙でね。食事をゆっくりとる暇もなかなか無い。
一人侘しく執務室で食事を取るより、君のようなかわいらしい女性と会話を楽しみながら食事をしたいのだがね?
もし、君が良ければ、だが。」
ミリアリアは、一瞬躊躇したが、心を決めた。
「ありがとうございます。
館長にお伺いを立てなければいけませんが、少しお時間を頂ければ大丈夫かと思います。
私こそ、ご一緒させて頂ければ光栄です。」
タッドは微笑みながら頷いた。
「ありがとう。時間が必要なのは、この会談の事後処理だね?
では1時間半後に迎えの車を寄越す。
それでどうかね?」
「はい。大丈夫です。」
「久しぶりに、楽しい食事が出来そうだ。楽しみにしているよ。」
そうして、当たり障りの無い会話をしながらミリアリアはタッドを外まで送り、タッドは笑顔で手を振って、車は領事館から去った。
「…どうなるのかしら、これ…」
ミリアリアは思わず呟いた後、迎えの事を思い出して慌てて館内に駆け戻った。
「エルスマン氏に?」
アマギは驚いた様子で、書類から顔を上げた。
「…はい。一時間半後に迎えの車を寄越すと。
それまでに、今日の会談の内容をまとめます。間に合わなければ、戻った後自室で仕上げます。
あの、ですので…」
そう言って小さくなるミリアリアに、アマギは笑って頷いた。
「エルスマン氏のせっかくのお誘いだ。構わぬよ。」
「ありがとうございます!」
ミリアリアはぺこりと頭を下げた。
「ところで、ハウ。
君は、ザフト軍将校のディアッカ・エルスマンと結婚の約束をしている、というのは事実かね?」
それまで傍観していたサイが、ちらりとアマギに視線をやった。
ミリアリアは、碧い瞳でまっすぐアマギを見つめて、頷いた。
「はい。まだ正式な取り決めは交わしていませんが、私は彼と結婚するつもりでいます。」
アマギとミリアリアの間に、沈黙が訪れる。
AAのクルーでも、限られたものしかこの二人の婚約は知らされていなかった。
隠しているわけではなかったが、どこから話が漏れたのだろう?
「…そう、か。籍を入れたら、プラントで暮らすのか?」
「まだ詳しくは決めていません。婚約発表もしていませんので。
でも多分、結婚したら彼と一緒にプラントで暮らすことになると思います。」
アマギは、ふぅと息をついた。
「君の住居は、ここでいいのかね?」
「はい?」
ミリアリアはぽかんとした。
「ザフトの将校がオーブ領事館に頻繁に出入り、というのも外聞が悪かろう。
必要なら、今日にでもどこか外に君の住居を用意させるが。
どちらにせよ、私やアーガイルもここは仮の住まいで、いずれ外に出なければならんのだしな。」
ミリアリアはアマギの言わんとすることを理解し、感謝で胸が熱くなった。
ナチュラルとコーディネーターの結婚を、こうして理解してくれる人もいる。
それは、ミリアリアをひどく勇気付けた。
「…そうですね。でも、急いでないです。
サイやアマギ館長と同時期に探していただければ構いません。
それまでは、私が彼のところに行けばいいんですから。」
そう言ってミリアリアはにっこりと笑った。
「館長、本当にありがとうございます。
では私、急いで報告書をまとめてしまいますね!」
ぱたぱたと走り去るミリアリアを、サイとアマギは呆然と見送った。
「…アーガイル。彼女は…」
「綺麗に、なりましたね。癪ですが、ディアッカのお陰じゃないですか?」
サイはそう言ってアマギに微笑む。
女性は、恋をするとああも美しくなるものか。
アマギも、それ以上は何も言わず、黙って笑みを浮かべた。
2014,6,13up