同じ日生まれ ー愛しい一日ー

 

 

 

 

「おはようございます。お誕生日、おめでとうございますわ、キラ!」
よく晴れた朝。
唇に感じた柔らかい感触と、ふんわりとした笑顔。
キラは目をぱちくりとさせ、半分頭の回らないまま飛びついてきたラクスを抱きしめた。
 
 
二度の戦争が終わり、ようやく和平への道を歩み始めた二つの種族。
腕の中にいるキラの宝物は、その立役者の一人としてここプラントでも、そして地球でも有名な存在だ。
 
「おはよ。ありがと、ラクス。」
「はい、どうぞ」
「え?」
するり、と首に掛けられた何かを手に取ると、ラクスの手のひらのぬくもりが移ったのか、ほんのりと温かい。
 
「これ…もしかして、ハウメアの護り石?」
 
思わず目を見張るキラに、ラクスは「はい!」と笑顔で頷いた。
「アスランが紅い石をお持ちなのはご存知でしょう?以前見せていただいた時に、昔カガリさんから貰った、と仰っていましたの。お前は危なっかしいから、これに守ってもらえ、って。」
「ああ…確かに、危なっかしかったよね、アスランは。」
「過去形ですの?」
そう言ってラクスは首を傾げ、くす、といたずらっぽい笑みを浮かべた。
 
「さぁ、どうだろ。カガリがいれば大丈夫なんじゃない?」
「ふふ、そうですわね。アスランの選択は正しかったと思いますわ。」
 
二度目の大戦の後、自らの意思で再びオーブへと降りた親友の決断。
一度は乱暴とも言えるやり方でザフトに戻ってしまったが、それでも再び愛しい人のそばにいることを選んだ親友を、キラは今でも誇らしく思っている。
どうか、そばにいて守ってほしい。自分の、大切な双子の姉を。
腕の中の宝物と同じ、もう一人の平和の立役者の顔を思い浮かべ、キラはふんわりと微笑む。
 
「カガリにメールしなきゃね。誕生日おめでとう、って。」
「そうですわね。この石のお礼もしなくてはなりませんし。」
「え?これカガリが選んでくれたの?」
 
柔らかな翠色の石は、なんとなくカガリの好みと微妙にずれている気がして、キラは目を丸くした。
「いいえ、選んだのはわたくしですわ。ミリアリアさんがカガリさんにお願いして下さって、カガリさんから色々教えて頂きました。」
「ミリィが?」
「あら、キラはご存じないのですね?…今度ディアッカさんにお会いしたら、ドッグタグを見せて頂くとよろしいですわ。」
まだ二人が恋人同士だった頃、ミリアリアはディアッカの誕生日プレゼントにハウメアの護り石を贈っていたのだが、どうやらキラはその事を知らなかったらしい。
キラのための石を選ぶ参考に、と自分の護衛任務に就いていたディアッカに頼んで見せてもらった石は、とても綺麗で。
聞けば、ミリアリア自身が採掘した原石を加工したものだと言うことだった。
 
『嫁さんが選んでくれた、世界に一つだけの石ですので。きっと俺のことを護ってくれると思います。』
 
そう言ってばちん、とウインクを一つよこすディアッカに、ラクスは笑いを抑える事が出来なかった。
「カガリ、どうしてるだろうね。やっぱり誕生日パーティーとかするのかな。」
「そうですわね。お立場もありますでしょうし。」
「アスラン、ちゃんとエスコートできるかな?」
「大丈夫ですわ、きっと、ね、ピンクちゃん?」
勢いよく飛んできたピンクのハロを器用に受け止め、「そうだね」とキラは頷く。
 
 
自分の出生の秘密を知り、生まれて来て良かったのかと悩んだ事もあった。
たくさん考えて、悩んで。
それでも戦うと決めた。
ラクスや自分達が必ずしも正義ではない。その事も承知している。
それでも、前に進むと決めた。
何もしなかったら、何も変わらないから。
 
「…君もそうだよね?アスラン」
「はい?」
 
小さな呟きに、ラクスが首を傾げる。
「なんでもない。ありがとう、ラクス。僕もドッグタグにつけるね、これ。」
「ありがとう、はわたくしの方ですわ。」
「え?」
きょとん、とするキラに腕を回し、ラクスは耳元で囁いた。
 
 
「生まれて来て下さって…ありがとう、キラ。」
 
 
柔らかい声にキラは紫の瞳を見開きーーそのままぎゅ、とラクスのしなやかな体を抱きしめた。
 
 
 
 
 
 
 
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キラカガお誕生日小噺@2016です!

普段ディアミリばっかり書いているのでちょっと緊張(笑)

まずはキラから、です。

 

 

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2016,5,19up

お題配布元:color season 様