その頃ディアッカは、イザーク、マリューとともに談話室にいた。
フラガはエターナルに出掛けていた。
大きなモニタには、ラクスとキラ、アスランの姿も見える。
「今、フラガ大尉とダコスタくんが、テロリストたちの尋問を行っている。
僕も最初は同席したんだがね。」
そう言うとバルトフェルドは椅子にもたれかかった。
「尋問は順調なのですか?」
ディアッカの後ろに立つイザークが尋ねた。
「順調、もなにも・・・。」
バルトフェルドは皮肉な笑みを浮かべた。
「やつらは結局、ただの駒だよ。ジュール隊長。」
「は・・・?」
イザークがいぶかしげに首を傾げる。
「ロード・ジブリールが死んだから、戦争が終わったからといって、ブルーコスモスが消えるわけではない。
プラントにも、いまだザラ議長の志を継がんと動いているものもいる。ブレイク・ザ・ワールドがいい例だろう。」
アスランが辛そうに俯くのが見えた。
「やつらは、地球にいる黒幕のアイディアに乗っかったただの駒でしかない。
MSの開発が出来るくらいだ。
そこそこ優秀な駒、であることは認めるがね。
カトー教授の線からここまでのことを計画したのは黒幕だろう。
教え子の事もかなり仔細に渡って調べ上げていたところを見ると、お嬢さんの同業者も一枚噛んでいる可能性があるな。」
ディアッカは知らずため息をついていた。
ジャーナリストの全員が、ミリアリアのような志を持っているわけではない。
それは理解しているはずだったが、やはり悔しさが胸にこみ上げた。
「やつらに関しては、こちらで尋問を続ける。
AAにお嬢さんたちがいる以上、無用な危険は避けたいのでね。よろしいですかな、ラミアス艦長?」
バルトフェルドはそう言って、イザークの隣に座るマリューに微笑みかけた。
「ええ、お願いします。お気遣い感謝します。」
マリューも微笑んでそう答えた。
「あと数時間で、オーブの姫が到着する。
その時点で尋問中のテロリストたちをオーブに引き渡す。」
「オーブに・・・?」
そう声を上げたのはアスランだった。
「もともとAAはオーブ軍籍の艦だ。その艦のクルーを狙ったテロリストをオーブに引き渡すのは、おかしな話じゃないだろう?」
バルトフェルドはモニタを向いたまま、アスランを諭した。
「ですが、彼らの最終目標はプラントではないのですか?それなら・・・」
「獅子の姫君がそれほど心配か?」
バルトフェルドがはじめてアスランに向き直った。
アスランは言葉を失う。
「この話は姫君自らの提案だ。異論があるのなら到着した後姫君に直接話をしたらいい。もっとも・・・」
バルトフェルドはくすりと笑った。
「話が、出来るといいがね?」
「・・・さて、わたくしもいくつかご報告してよろしいですか?」
さらに俯いてしまったアスランを心配そうに見つめるキラの横で、ピンクの髪が揺れた。
「カガリさんがこちらに到着された後の事を、ご説明します。」
ラクスがモニタの向こう側で、にっこりと微笑んだ。
「現在プラントの評議会では、アイリーン・カナーバ様が暫定評議長として動いておられます。
先程まで、わたくしはカナーバ様と今後についての話をしておりました。
まず、AAについて、申し上げます。」
そういってラクスは真剣な表情になる。
「AAはオーブ代表首長の護衛の任務につき、このまま、プラントに向かっていただきます。」
イザークが息を呑み、ディアッカが無言で眉を上げる。
マリューも言葉には出さないものの、驚きを隠せないようだ。
「これは、カガリさんの望みでもあります。現在随行している艦で尋問中のテロリストをオーブに移送し、代わりにAAをともにプラントへ、と。
すでにカナーバ様にもカガリさん自らそのようにお申し出をされたそうですわ。
そして、カナーバ様もそれを了承いたしました。」
マリューがゆっくりと頷いた。
「わかりました。燃料もぎりぎり何とかなりそうですし・・・。クルーにもそのように伝えます。」
「プラントに補給の用意があるそうですわ。よろしくお願いいたします。」
ラクスもふわりと微笑んだ。
「そして、今回Gシリーズ開発者護衛の任についてくださったイザークさん、ディアッカさん。」
二人は顔を上げ、ラクスを見た。
「任務遂行、ほんとうにありがとうございました。カナーバ様からもお二人に感謝の意をお伝えするよう申し付かっております。」
「もったいないお言葉です。」
イザークがかすかに目元を緩めて答え、ディアッカも目礼する。
「お二人のこちらでの任務は完了いたしました。よって、カナーバ様から帰還命令が出ております。」
「AAとは別で、ということですか?」
ディアッカのそんな問いに、イザークが眉を顰めた。
「そのように、なりますわね。」
ラクスも気づいたのであろう、わずかに苦笑する。
「カナーバ様には、ディアッカさんの被弾を理由にすぐの出立は難しい、と再三お話してあります。
ですが、そうゆっくりは出来ないでしょうね。
カガリさんの到着を待って、それから、というのはいかがでしょう?」
カガリさんが、あなた方にお会いしたいそうですのよ、とにこにこ笑うラクス。
アスランが絶望的な表情になるのをディアッカは少々哀れに思ったが、もうあまりこちらにも時間がない。
悪いな、アスラン。
ディアッカは、マリューと目を見交わすとモニタに向き直った。
「ラクス嬢、お話があります。」
マリューが、びくりとするイザークの腕にそっと手をやり、微笑んだ唇に指を当てて首をかすかに振った。
ディアッカが、動きます。
2014,6,11up