23,ヴァレンタイン 1

 

 

 

ミリアリアが窓辺から二人を振り返った。
「さて、そうと決まれば、まずはここから脱出しなきゃね。」
そう言って、無造作に放り出されていたバックパックを手に取る。

 
「当然、武器は抜かれてるよね…。それなら…。ちょっと2人とも、向こう向いててくれる?」
そう言うと、ミリアリアは無造作に首元から手を突っ込み、胸元をまさぐった。
「あっ…」
「カズイ?まさか見たんじゃ…」
「みみみ見てません!」
カズイ、動揺しすぎだろ…。
これはディアッカには黙っておこう、とサイは固く誓った。

 
ミリアリアは、下着に挟んでおいた極薄型のスタンガンを取り出した。
「これ、使えるかな?」
「ミリィ、何てもん持ってんだよ…」
「昔の知り合いにもらったの。」
サイが頭を抱える。
下着の中からスタンガン。
トール、君の大好きだったミリアリアは強い女の子になったよ…。
そんなサイを見て、流石に目をそらしながらミリアリアがぼそりと言った。
「レースとかで厚みが出るから、ここに入れておけば簡単にはバレないのよ。…ディアッカには黙っててよね。」
またひとつ、ディアッカに秘密が増えた。

 

 
『ひとつ、気になることがあります。』
ラクスが不安げに切り出した。
『現在エターナルから派遣している先遣隊と、先程から通信が途絶えているのです。さらに、一瞬ですが熱源反応が確認されました。』
『何者かと交戦中、ということか?』
アスランが呟いた。
『可能性はあります。いかがいたしましょうか、皆さん?』
どう、分かれるかー。

 
『僕とアスランで、先遣隊の様子を確認しに行く。
ミリィ達が機体を動かすなら、ちょうど人数も合うしアスランは急いで降りなくてもいいでしょ。
ムゥさんはエターナルから出るテロリスト制圧部隊に同行して降下。
バルトフェルド隊長も一緒に。
イザークとディアッカは、制圧部隊と降下した後そのままミリィ達の救出に向かって欲しい。
先遣隊の様子次第では、僕達も後を追うから。
どう?ラクス。マリューさんも。』
キラの提案に、ラクスもマリューも頷いた。
『適材適所、ってね!頼むぜ坊主ども!』
フラガの軽口にイザークがムッとした顔を向ける。
ディアッカは、そんなイザークの代わりに返答した。
「りょーかい、おっさん!」

 

 
廃コロニー内、ヴァレンタインの施設にガラスの割れる音と悲鳴が響いた。
まもなくして、ヴァレンタインの構成員が二名駆けつけてくる。
「カトーゼミの奴らの部屋だぞ!」
「脱走か?」
そんな声が聞こえ、続けて荒々しくドアが開いた。
「おい、外はどうなってるんだよ!」
金髪に薄い色の入った眼鏡の青年が噛みつくように声を荒げる。
「な…何がどうなってるんだこれは?」
窓ガラスが割れ、椅子が倒れた散々な部屋の惨状。
負傷している女は、驚きのあまりか声も出せずドアの近くにしゃがみこんで震えており、そのそばには数日前に捕らえられた黒髪の青年が心配そうに寄り添っている。
「こっちが聞きたいよ!いきなりさらわれて閉じ込められたと思ったら今度は外からガラス割られて!どうなってんのか外見てみろよ!?」
ヒステリックに喚く眼鏡の青年に気圧されたのか、構成員は二人とも窓辺に近づく。
「まさか、ザフト…」
「そんなわけねぇだろ!」
「じゃあ誰が…」
おそらくあまり戦闘慣れしていないのだろう。恐る恐る窓際に近寄ると、そっと外を伺おうとする構成員。
その背後で、カズイとミリアリアが立ち上がった。

 

 

バチィっ!!
「な!」
突然背後で起きた光と音に、構成員の一人は昏倒しもう一人も慌てて振り返る。
そこには、入り口で震えていたはずの女がいてー。
無言で、渾身の蹴りを構成員に放った。
正しくは、構成員の体の中心、足の間に、それは的確に。

 
悶絶して崩れ落ちた二人目の構成員に、ミリアリアは「ごめんなさい」と一言、スタンガンをあてる。
先ほどと同じ音と光の後、悶絶していた構成員は同僚の後を追って昏倒した。

 
「ミリィ…」
構成員に同情の眼差しを向けるサイとカズイを、ミリアリアは気まずげに振り返った。
「…知り合いに教わったの。最低限これだけは覚えとけって。…これもディアッカには内緒よ、サイ!」
「わ、分かったよ。」
「行こう!時間がない!」
3人は辺りを伺うと、すぐにそれとはわからぬようドアをきちんと閉め、外への道をカズイの先導で走り出したのだった。

 

 

 

016

ミリィにこんな事を教えたのは誰でしょうね…。そのうち、出てきます(笑)

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2014,6,10up