さらに時間は過ぎ。
若者に程よい手の抜き方を教える為、艦長には内密で廃コロニーの座標軸を割り出したノイマンの助けもあり、キラとディアッカは見事ヴァレンタインのサーバーへの侵入に成功した。
「まだあっちには気づかれてないね。ディアッカ、ここんとこのデータ全部落として!」
「マジかよ!?プロテクトすげぇぞコレ」
「1分で解除。その間にトラップ設置するから。」
「…りょーかい。トラップ急げよ」
そんな軽口を叩きながらもディアッカの表情は、それは真剣で。
なかなか普段見ることの出来ない横顔に、ミリアリアはつい見とれていた。
でもこれからは、いつだって見られるじゃない。
そう思ったミリアリアだったが、ふと気付いた。
今こうしてここに大好きな人達が揃っているのは、必然、じゃないんだ。
たまたまテロリストの件が勃発したから。
イレギュラーな状態なんだ、今は。
ディアッカと再び思いが通じ合って、戦争も終わろうとしていて今までよりは顔も合わせやすくなるだろうけど。
また、離れなくてはいけないんだ。
いつだって幸せな時間と離れる寂しさと背中合わせ。
この不安が取れる時は、来るのだろうかー。
そんな事を考えてミリアリアが唇を噛み締めたその時、キラが舌打ちして声を上げた。
「っ!気づかれた!ディアッカ、そっちは?」
「今落としてる!あと2分はかかるぜ!」
と、それまで黙って成り行きを見ていたアスランが口を開いた。
「キラ。あっちのサーバーにウィルスを。どうせ自作のを持ってるんだろう?」
サイがヒュウと口笛を吹き、ディアッカの手も一瞬止まった。
「貴様っ、いきなり何を…」イザークがたまらず立ち上がる。
「感染させて時間稼ぎするんだよ!そうすれば必然的にセキュリティの方に負荷がかかってこっちへの追求が遅くなる。時間稼ぎにはなるだろ!」
一瞬の沈黙ののち。
「ごめんねイザーク。アスラン普段は大人しいんだけど、ほら、やることはいちいち派手でしょ?」
だから、ね。
笑いを含んだキラの言葉に、イザークが溜息をついた。
***
「イージスにデュエルと、バスターですって?」
ブリーフィングルームに呼び出されたマリューは、キラの言葉にそれだけ返すと絶句した。
「こちらで解析したデータを元にした、該当機体のパイロットとの検証の結果です。
ストライクは生産に時間もかかるし、ブリッツはミラージュコロイドの問題がありますから…」
アスランとイザーク、ディアッカは複雑な表情だ。
テロリストが再開発した機体は、皮肉にもクルーゼ隊の生き残り、と言っても間違いではない彼らの愛機だったのだから。
そんな彼らを背に、サイが続けた。
「廃コロニーに持ち込まれたイージス、デュエル、バスターですが、すでにイージス以外には核燃料が搭載されているようです。
ヴァレンタインの狙いは、この機体をプラントに落とす事でしょう。
ピースメーカー隊より効力は薄くても、核爆発が起これば、コーディネイターとはいえ被曝の被害は甚大なものになるでしょうから…。」
『コーディネイターの将来をじわじわ奪う、いやらしいやり方だな。』
スクリーンの向こうで、バルトフェルドも顔を曇らせる。
『被曝による健康被害にナチュラルもコーディネイターもさして違いはない。
だが、出生率の下がったコーディネイターたちが被曝してみたまえ。懐妊しても遺伝子調整する前に胎児が育たない可能性が高かろう。』
それを聞いて、ミリアリアは愕然とした。
「なんてこと…」
マリューも俯く。
女性として、そんな話を聞いてショックを受けない訳がなかった。
「…機体を、奪取しましょう。」
マリューの毅然とした声がブリッジに響いた。
「ヴァレンタインが不法に開発、所持している機体を奪取して、破棄します。
ミリアリアさん、ダリダ、オーブ軍にも通達を!
プラントを核の脅威から護る事を、これよりAAの任務として我々は動きます。」
すると、サイが立ち上がった。
「許可を取る必要はありません。オーブには報告、として通達をして下さい。」
「え?」
目を丸くするマリューに、サイはにっこり微笑んだ。
「私、サイ・アーガイル特別参事官補佐はカガリ・ユラ・アスハの名代として申し上げます。
オーブ連合首長国軍はマリュー・ラミアス艦長の提案を受け、第二宇宙艦隊所属AAにテロリストの殲滅と機体の奪還、破棄の任務を命じます!」
「はっ!」
サイの言葉に敬礼で答える、マリューをはじめとするクルー達。
ミリアリアとチャンドラがすぐにCIC席に座る。
そんな信じられない言葉と光景を、アスラン、イザーク、ディアッカはただ呆然と見ていた。
サイはそんな3人に、振り返りざまこっそりウインクを送った。
「ラクスさん、バルトフェルド隊長、ディアッカ君たちも。
これがオーブとAAの総意です。ご協力頂けますか?」
艦長席に座ったマリューがモニタの向こうのラクスと、後方にいるディアッカ達を交互に見やって微笑む。
「一応俺、全権委任されてここに来てるし。まぁカガリが反対するわけないけどさ。」
ディアッカ達にそう言って笑ったサイが、マリューの隣に立った。
『…もちろんです。ありがとうございます、ラミアス艦長。サイさん。』
ラクスもモニタの向こうから、泣き笑いのような表情で微笑んだ。
2014,6,10up