ブリッジを出た後、ミリアリアは小走りに自室へ向かった。
地球から持ち込んだラップトップを立ち上げ、まずはターミナルの情報をチェックする。
“ターミナル”とは、地球圏や月など至る所にいるフリージャーナリスト、ジャンク屋やギルドなどが情報を手に入れるために使う非公式の掲示板のようなものである。
もちろん誰でも閲覧できるわけではなく、その道でそれなりの功績をあげたり、戦場の最前線で取材を続け、ジャンク屋やギルドとの信頼関係を勝ち得たものがIDカードを所持できる。
ミリアリアは、ダストコーディネイターのコミュニティ取材の際にこのカードを手に入れた。
あの凄惨な現場、悲惨な現実を世に知らしめて欲しいー。
それが彼らからの依頼。
報酬は、コミュニティのトップからもらったこのカード。
しかしその依頼は、まだ果たされていない…。
そういえば、この話をディアッカやイザークが知ったら、どう感じるのだろう。
彼らは、プラントのコーディネイターの中でも特別な調整を受けたと聞いている。
ある意味、ダストコーディネイターとは対局の存在だ。
「今回の事件が決着したら、話をしてみようかしら…」
すでにキラがディアッカにこの件を話してしまっていることなど知りもしないミリアリアは、そう呟くとターミナルサイトにIDを打ち込んだ。
しばらく見ない間に、たくさんのスレッドが立っている。
どんどんスクロールして行くと、ミリアリアの目に目当ての情報が飛び込んできた。
【ヴァレンタイン】
スレッドの作成者は全てイニシャルか偽名と決まっている。
作成者を確認すると、度々目にする名前がそこにあった。
ガセネタも数多く存在するターミナルにおいて、この人物は比較的正確な情報をアップしてくれることで知られている。
早速スレッドをチェックしていたミリアリアだったが、読み進めるにつれて大きな碧い瞳が驚愕に見開かれた。
【ヴァレンタインは拠点をメンデル近くの廃棄コロニーに移した】
【スカンジナビア王国製宇宙艇を奪取し、所属、識別不明のMSを数機搭載している模様。各記者は注意されたし】
カズイに関する情報はもちろん今のところ書かれていないが、これはまだこちらも知り得ない情報だ。
ブリッジに知らせなければ。
そう思って立ち上がろうとしたミリアリアの目に、全く違う情報が飛び込んできた。
それは、事件のスレッドとは別で、いわゆるジャーナリスト同士の伝言板のようなスレッドだった。
馴染みのジャンク屋などがミリアリアに連絡を取りたい時はここに書き込みをするので、宇宙に来ても欠かさずチェックはしていたのだ。
そこには短く、
【Mへ。DCの生き残りを発見。オーブにて保護】
それだけ書かれていた。
全滅したはずの彼らの中に、生き残り!?
ミリアリアはすぐさま、
【詳細求む。M】
とだけ書き込んだ。
ディアッカとの別離の間に出会った、悲しい過去を背負いながらも強くあろうとするダストコーディネイターたち。
そこには恋愛感情などもちろんありえなかった──離れている間も彼女はディアッカが好きだったから──が、ミリアリアの胸は高鳴っていた。
時間があればもう少し掘り下げて調査するのだが、今はヴァレンタインの件が先だ。
ミリアリアはブリッジに内線を繋ぎ、ターミナルで得たヴァレンタインの情報をマリューに伝えた。
そしてネットワーク回線を閉じると、続けて機体のデータディスクをラップトップにセットした。
ブリッジでは、ミリアリアからの新情報を元にラクスやバルトフェルドも参加した話し合いが行われていた。
「彼らは、カトーゼミの皆さんを何とかして集め、廃棄コロニーでGシリーズを完成させるつもりのようですわね」
エターナルにいるラクスがモニタの向こうでそう切り出すと、ブリッジを重たい空気が包む。
「カズイ君の乗った艦、まだ救命ポッドも発見されてないということは…。やはりその廃棄コロニーに拉致された可能性が高いわね。メンデル周辺なら、いくら廃棄コロニーとはいえ探せばある程度の資材も調達できそうだし」
「機体の開発がどこまで進められているか、まずはそれをミリアリアさんとサイさんに解析して頂ければ良いのですが…」
ラクスがそう言った時、ブリッジの扉が開いた。
そこにいたのは、息を切らせたミリアリアだった。
「ミリィ、どうしたんだ?移動する時は連絡を…」
ディアッカの小言に「あ、ごめん」と一言返し、ミリアリアはクルー達に向き直った。
「ブリーフィング中にすみません。ディスクのチェックをしていたんですけど、ちょっと確認したいことがあって」
「確認?お嬢さん、それはもしかして…」
興味深げなバルトフェルドの言葉に、ミリアリアはモニタを見つめ頷いた。
「このディスクの中身、恐らくですけど二機体分の動作制御に関するデータが入っています」
その場にいた全員が驚愕の表情でミリアリアを見つめた。
うちのカトーゼミメンバーは、かなり優秀な方がそろっている設定なのです
2014,6,9up
2014,9,23改稿