「これ、美味しい、です!」
シホの声に、ディアッカはにんまりと笑った。
「だろ?あ、おまえこれあんま食うなよ?俺が一番好きなやつなんだから」
「足りなくなったらまた用意するわよ!もう!ごめんね、シホさん」
テーブルには、先程よりもさらに多くの料理が並んでいた。
様々な具材のロールサンドに、豆腐とパプリカのマリネ、新鮮なトマトとチーズのピンチョス。
メインはローストビーフや卵の彩りが美しいミートローフ。
女性向けなのか、ほうれん草のキッシュやシーザーサラダなども用意されていた。
「シェリー、ローストビーフ食べる?」
「ええ、頂くわ。」
甲斐甲斐しくシェリーの世話を焼くアリーの姿を見ながら、こいつも苦労してんなぁ、とディアッカは内心少しだけ同情した。
シェリーの親は大きな会社を経営しており、彼女自身もかなりのお嬢様育ちだ。
食べたいものを自分で取り分ける、などした事がないのだろう。
「えっと、ソースは…ブルーベリーソースが好きだよな?シェリー。」
「そうね。でもここには無いみたい。」
不満げなシェリーの言葉に、サイがちらりとディアッカに目をやり、シホの目が少しだけ細まる。
「あ、じゃあすぐ作りますね。簡単に出来るし。」
ミリアリアが笑顔で立ち上がり、ぱたぱたとキッチンに消えて行くのをシェリーはぽかんとした顔で見送った。
「…作る?ソースを?」
アリーの言葉に、ディアッカは蕩けんばかりの笑顔で頷いた。
「買う、って思うのが普通だよな?でもミリィは作っちまうんだよなー。なんでも。」
訝しげに眉をひそめるシェリーを視界の隅に入れながら、ディアッカはピンチョスをぱくりと口に放り込んだ。
「奥さん、料理好きなんだな。」
「そ。だって今日の料理、全部あいつの手作りだぜ?」
「…え?」
シェリーの驚いたような声。
「ケータリングかと思ってた…」
「ミリアリアの料理の腕は確かにプロ並みだな。ジュール家のシェフにも引けを取らない。」
何度か食事に招待されたことのあるイザークも口を添え、ディアッカは蕩けるような笑顔を浮かべた。
「だろ?もうさ、あいつの料理食ったら簡単に外食なんか出来ないぜ?
こういう凝ったものじゃなくても、あいつが作る飯はなんだって美味いからさ。」
だから、デザート楽しみにしといて、と言ってミリアリアの消えたキッチンを振り返るディアッカ。
その愛おしげな視線の先では、ミリアリアがぱたぱたと動き回っている。
シェリーがそんなディアッカの姿を複雑な表情で見つめている事に、サイは目ざとく気付いていた。
「お菓子も、かなりの腕前ですよね。ミリアリアさん。」
シホは、以前教わりながら作ったガトーショコラを思い出し、イザークと顔を見合わせ微笑んだ。
「そうそう、俺、あいつの作った菓子とかケーキはなぜかなんでも美味しく食えるんだよな。
それまで、そんなに甘いもの好きじゃなかったんだけどさ。」
「お前しょっちゅうアレが食べたい、雑誌に載ってたこのスイーツが食べたいとかミリィに言ってるだろ?
ミリィ、よく昼休みに材料買いに走ってるよ?」
サイの言葉にディアッカは笑顔で頷いた。
「知ってるって!あ、でも俺だってちゃんと買って帰ってるぜ?そこまで亭主関白じゃないっつーの!」
そうこうしているうちにキッチンからブルーベリーの香りが漂って来る。
「俺、ちょっと手伝ってくるわ。適当に食ってて?」
ディアッカは立ち上がり、空いた皿を手早く集めるとそれを持ってキッチンへと消えて行った。
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ディアッカのお惚気大爆発(笑)
どれだけ自分がミリアリアの事を愛しているか、を語り尽くします。
ミリアリアの甲斐甲斐しい働きぶりも、若奥様らしくて可愛い!
反面、シェリーの心は静かにざわついて…。
2014,10,1up