ホームパーティー 2

 

 

 

 

「ホームパーティー?うちで?」
キッチンで夕食の準備をしていたミリアリアは、ディアッカの言葉に驚いて振り返った。
「そ。たまにはそういうのも良くねぇ?俺も手伝うから、どう?」
「それは構わないけど…誰を呼ぶつもりなの?」
 
 
ここが、肝心。
ディアッカは笑顔で話を続けた。
 
 
「イザークにシホ。あ、せっかくだからサイも呼ぼうぜ?あいつ独り身だから、家庭の味に飢えてるだろうし。」
ちょっとだけ失礼な物言いに、くすくすと笑うミリアリア。
 
「サイは結構料理するらしいわよ?でも、声はかけてみるわね。」
「ああ、頼むな。…そうだ、今日議事堂でアリーに会ってさ。でも任務前でゆっくり話せなかったからアリーとその奥さんも誘ったから。」
 
ミリアリアの碧い瞳が大きく見開かれた。
 
「アリーさん、って…昔エザリアさんのパーティーで会った事のある、イザークの従兄弟の?」
「あ、覚えてた?そうそう、そいつ。結婚式にも行けなかったし、久しぶりにゆっくり話したくてさ。」
「…うん、そうよね。間が悪くて欠席しちゃったんだっけね。じゃあ、お客様は全部で…5人?」
「そうなるな。じゃあ早速、次の土曜日でいいか?」
「ええ。まだ時間もあるし、何作るか考えなくちゃね。」
そう言ってにっこりと微笑み、ミリアリアは夕食の準備の続きに戻った。
ディアッカはそっと息をつくとリビングのソファに座り、にんまりと微笑んだ。
 
 
 
そして、あっという間にパーティー当日がやって来た。
 
「もうちょっとしたらみんな来る時間だから、ディアッカ、チャイムが鳴ったらお出迎えしてくれる?」
「ああ。だいじょーぶ?そっちは。」
ミリアリアはにっこりと微笑んだ。
「もちろん!ちょっと少なかったか不安なくらいよ?」
 
ディアッカはテーブルを振り返り、そこに並ぶ色とりどりの料理達に目をやると満足げな笑顔を浮かべた。
 
「いや、充分だろ。つーかまだ何か作るの?」
「え?だってデザートの準備もあるし、時間がかかるのから仕上げて行ったから、まだちょっと…」
「ふーん。ま、俺も後で手伝うからさ。あ、これ俺大好き。」
「こら!手を出さない!」
 
ミリアリアに叱られながら、ディアッカは出来立てのサンドイッチロールをぱくりとつまみ食いする。
蟹とアボカドのロールサンドはディアッカの好物だ。
ーーーやっぱ、うちの奥さんてサイコー。
 
その時、玄関のチャイムが鳴った。
 
 
「いらっしゃい、サイ!今日はずいぶん早く終わったのね。」
「回せる分の業務は明日に回して来たからね。ディアッカ、ミリィ、今日はありがとう。はい、これ。」
仕事帰りのサイから手渡されたのは、沢山のフルーツ。
オレンジやグレープフルーツなど、ミリアリアの好物ばかりだった。
「ミリィ、果物好きだろ?これならカットするだけでも様になるしね。あとでみんなで食べようよ。」
「やだ!ありがとう、サイ!」
ぱぁっと顔を輝かせるミリアリアを、サイだけではなくディアッカも嬉しそうに見つめた。
 
 
そして程なく、イザークとシホ、アリー夫妻も到着した。
彼らは従兄弟同士という事もあり、待ち合わせて一緒に来たようだ。
 
「ミリアリア、これを。」
イザークがずい、とミリアリアに差し出したのは年代物のワイン。
これまた滅多に市場ではお目にかかれない高級品だ。
「母上からだ。きっと気に入るだろうから、と。」
「エザリアさんから?あとで御礼の電話しなくちゃ!わざわざありがとう、イザーク。」
酒に強いミリアリアを知っているエザリアならではのチョイスに、ディアッカは思わずくすりと笑った。
そして、戸惑ったように入口に佇むアリーとシェリーに近寄り、声をかけた。
 
 
「よ、アリー、こないだは慌ただしい時に悪かったな。」
「いや、俺こそ話し込んで悪かった。今日は声をかけてくれてありがとう。」
「シェリーも久しぶり。結婚おめでとう。」
「…ありがとう。ほんとに久しぶりね、ディアッカ。」
それまで少しだけ硬い表情だったシェリーはにっこりと微笑み、ディアッカを見上げた。
 
 
 
アリーとシェリーをリビングへ通し、ディアッカは飲み物を取りにキッチンへ消える。
すかさずきょろきょろと室内を見回すシェリーの目に、どこかで会ったような顔が飛び込んで来た。
 
「あ…」
 
薄い黄色のサングラスをかけた青年は、オーブの首長服を身に纏っていた。
シェリーは先日の騒動を思い出し、思わずぎくりと身を強張らせる。
青年がちょっとだけ目を見開き、すぐ笑顔になる。
 
「こんばんは。先日はお疲れ様でした。」
 
にこやかに挨拶され、シェリーは一瞬目を泳がせたが何とか笑顔を作り、「こんばんは…」ととりあえず挨拶を返した。
「シェリー、お知り合い?」
「あ、ええ、あの…」
 
「サイ・アーガイルです。オーブ総領事館で特別参事官補佐と外交官の任についております。
先日、うちの館長と国防委員との会談の際、お見かけしたもので。」
 
サイのにこやかな挨拶と、人好きのする優しげな笑顔に、アリーもまた微笑んだ。
「そうですか。アルフォンス・ジュールです。こちらは妻のシェリー。
イザークの従兄弟で、ディアッカとは幼い頃からの友人です。」
 
 
アリーとサイが笑顔で握手を交わすのを、シェリーは何とも言えない顔で眺めていた。
 
 
 
 
 
 
 

007

突如決まったホームパーティー。
アリーだけでなくシェリーまでも招待したディアッカの思惑は?

 

 

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