5, 前に進む時 2

 

 

 

 
「ラクス嬢もこの件に関してはずっと気にされていてな。以前からオーブのアスハ代表と会談を重ねていたようだ。
オーブ政府からも全面的に協力する、と申し出があった。」
「…ラスティから連絡は?」
 
ディアッカの問いに、イザークはゆっくりと首を振った。
 
「あいつは2年前オーブに戻って以来、また傭兵として活動していたそうだ。
ただ、各地を転々としているらしく一般人では連絡のつけようがない。
ああいった傭兵とつなぎを取るにはそれなりの人脈が必要だそうだ。」
 
ディアッカは別れ際のラスティの言葉を思い出す。
 
 
生きろ。ニコルとミゲルの分も。
 
 
「あいつ…そもそも無事なのか?」
イザークが一瞬、悲しげな表情になった。
「それも分からん。とにかく我々にはあいつに接触する手だてがないのだからな。
お前に課せられた任務にはそれも含められている。」
「マジかよ…。結構厄介な話じゃねぇか。」
 
「だからお前に任せたんだ。」
 
イザークの真剣な声に、ディアッカは顔をあげた。
 
 
「お前なら何かしらの成果を上げて、ここに戻ってくると俺は信じている。
でなければ、こんなとんでもない激務の最中にお前を手放すはずがないだろう。
…それだけは肝に銘じておけ。」
 
 
ディアッカは、心に重くのしかかっていた何かが少しだけ軽くなった気がした。
 
「ああ。サンキュ、イザーク。せいぜい働いてくるぜ。」
にやりと笑ってそう答えると、馬鹿者が、とイザークらしい言葉が返って来た。
 
 
 
「それと、シン・アスカについてだが。あいつについてもお前に一任する。」
 
 
「…は?」
ディアッカは驚き、ぽかんと口を開けた。
「あいつのメンタル面の弱さは、オーブで家族を失った事に由来する。
先の大戦の折、MS…フリーダムの戦闘に家族が巻き込まれたそうだ。」
「…マジで?キラはその事…」
イザークは頷いた。
 
「ああ、知っている。停戦後に直接話もしたそうだ。
アスランとラクス嬢、それにメイリン・ホークも同席していたらしい。」
 
「ふぅん…。」
「俺の性格上、細かい気配りなど出来んからな。そんな余裕もない。
そう言う事は、面倒見の良いお前に任せる。いいな?」
 
ディアッカは苦笑した。
面倒見がいいって、よく言うよ。お前に鍛えられたんだっつーの!
「なんだ?」
「いや、別に。…メイリン・ホークはどうすんの?」
「彼女の事はシホに一任してある。
あれだけ情報処理に特化したやつもそうそういないのでな。お前のいない間に鍛え上げておく。
シホと組ませればちょうどいいだろう。」
 
 
そこまで話したところで、イザークの携帯が鳴った。
評議会との掛け持ちも、楽ではないのだろう。
ディアッカは立ち上がった。
 
「…俺、戻るわ。」
「ああ。とりあえずさっさと白服に袖を通せよ。お前はもう隊長なのだからな。」
「…ああ。」
 
白服は、アパートに置いたままになっている。
ミリアリアとのいざこざをイザークに話していないディアッカは、それ以上何も言えずドアに向かい歩みを進めた。
 
 
「ディアッカ。一つ言い忘れていた。」
電話は折り返す事にしたのだろうか。
背後からかけられた声に、ディアッカはゆっくりとイザークの方を振り返る。
 
 
「ラスティの居場所の件。ミリアリアなら分かるかもしれない。」
「はっ?!」
ディアッカの驚きぶりに、イザークはくすりと笑った。
 
「言ったろうが?一般人ではつなぎの取りようがないと。
ああいった人種と一番接触がしやすいのは、ジャーナリストやジャンク屋が利用する『ターミナル』だ。
ミリアリアは元ジャーナリストで、ダストコーディネイターとの繋がりも深い。
しかも、ラクス嬢に預けてあるとは言えターミナルの許可証も所持している。」
 
 
 
ーーディアッカと一緒にいる以上、今は、そっちの仕事に戻る気は無いからーー
 
 
 
かつてミリアリアが口にした言葉を、ディアッカはまだしっかりと覚えていた。
 
 
「彼女にそれをさせるのは最終手段だろうが…。頭の隅にだけは置いておけ。
それと、さっさと仲直りもしておけよ。シホの機嫌が悪くてこっちまで迷惑だ。」
 
 
ディアッカは最後の言葉に瞠目する。
こいつ…知ってたのか!?
 
 
「…うるせーよ。」
 
 
堪えきれず、くすくすと笑い出したイザークをぎろりと睨みつけ。
ディアッカはジュール隊隊長室を後にした。
 
 
 
 
 
 
 
016

約束を忘れていなかったイザーク。

ついに、この件も動き出します。

 

 

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