41, 三回目の… 1

 

 

 

 
翌朝。
ディアッカは目を覚ますと、いつもの癖でミリアリアを抱き寄せようと腕を伸ばし、昨晩の出来事を思い出した。
 
あいつ、ちゃんと帰れたかな…。
 
目を閉じれば、頭に浮かぶのはミリアリアの事ばかり。
なぜあんな事を言ってしまったのだろう。
 
 
結婚、やめたいのか、なんて。
 
 
ミリアリアの想いは充分分かっているつもりだ。
自分を愛してくれている事も疑っていない。
ただ、あの時拒絶の言葉を吐かれて、ひどく動揺してしまった。
 
「情けねぇなぁ…。」
 
意地っ張りなのは、どっちも一緒なのかもしれない。
ディアッカは勢いをつけて起き上がると、シャワールームに足を向けた。
 
 
 
「おはよう、ミリィ。…どうしたの?」
サイは、目の下に隈を作ったミリアリアに驚き、思わずそう声をかけた。
 
「…おはよう。ちょっと昨日眠れなくて…」
弱々しく微笑むミリアリアの前に、サイは仁王立ちに立った。
 
 
「…ケンカしたんだろ?ディアッカと。」
 
 
いよいよ明日入籍だというのに、何をやってんだ、あいつ!
サイは内心でディアッカに毒づいた。
 
 
「…ひとりになるのが、怖いの。」
 
 
サイの目の前で、ぽつりと呟いたミリアリアの目から、不意に涙が零れた。
 
 
「どうしてこんなに、次から次へ不安なことばかり頭に浮かぶの?
昨日不安だったことが解決できても、今日になるとまた別の不安に襲われるの。
ねぇサイ、どうして?」
 
ミリアリアの縋るような眼差しを、サイは正面から受け止めた。
こんなに不安定なミリアリアは久しぶりだ。
少なくとも、こんな風に、泣いたりする子じゃないのに。
 
 
「ミリィ、アマギさんは午後からじゃないと来ないしさ。ちょっと話そうか。」
「え?でも…ここを留守にするわけには…」
「部屋を移動するだけ。ほら立って。行くよ!」
 
サイに手を引かれ、ミリアリアは慌てて立ち上がった。
 
 
 
『久しぶりね、サイくん、ミリアリアさん。元気だった?』
ヴィジホンの向こうから優しく微笑んでいるのは、マリュー・ラミアス艦長だった。
「はい。そちらはいかがですか?」
『おかげさまでみんな元気よ。…で?何があったの?』
 
マリューとて、伊達にAAの艦長はしていない。
サイとミリアリアの様子を見て即座に反応するその洞察力に、サイは感心せずにいられなかった。
 
「実は…ミリィの話を聞いてやって欲しいんです。」
「サイ!」
ミリアリアからあがる抗議の声を無視し、サイは話を続けた。
 
 
「マリッジブルー、ってやつだと思うんですけど。
男の僕より艦長の方が相談相手として適任だと思うんです。」
マリューが驚いた表情を浮かべた。
 
 
『…明日、入籍よね?ミリアリアさん。』
「…はい…」
 
マリューはにっこりと微笑んだ。
『分かったわ。ミリアリアさん、不安なことがあるのね?
私でよければ話してみない?』
優しいマリューの声に、ミリアリアの目からぽろぽろと涙が零れた。
 
 
 
『そう…。そんなことがあったの。』
ミリアリアは涙を拭い、頷いた。
 
「私、ディアッカを信じてないわけじゃないんです。
彼と結婚するのは本当に嬉しいし、この先の人生を二人で生きて行きたい気持ちに変わりはありません。
だから、どうしてあんな事言っちゃったのか、自分がわからなくて。」
 
『それがマリッジブルー、ってやつだもの。しょうがないわ。』
 
首を傾げて微笑むマリュー。
『ディアッカくんも、本気で結婚やめたいのかなんて言ったわけじゃないわ。
だから、今日帰ったらでもいいし、そうね…お昼休みでもいい。
連絡してご覧なさい?
きっと、あなた以上にやきもきしているはずだから。』
 
「マリッジブルー…」
『そう。結婚前の女性にはよくあることよ。あなただけじゃないわ。』
 
 
ミリアリアは素直に頷く。
その子供のような仕草に、マリューもつい微笑んだ。
『ね、ミリアリアさん。ディアッカくんが選んだのはあなたよ。
AAで、ディアッカくんが私に言ったこと、覚えてる?』
 
 
ーー俺たちは互いを必要としてるんです。だから、全力で守ります。自分の一生をかけて、幸せにしますーー
 
 
「…はい。」
『なら、少しくらい不安でもディアッカくんを信じてあげなさい。
あなたたちなら、絶対に大丈夫だから。ね?』
マリューの優しい言葉と笑顔。
「ありがとうございます、マリューさん。」
ミリアリアは、涙を浮かべた碧い瞳を細め、微笑んだ。
 
 
 
 
 
 
 
016

喧嘩したまま翌朝を迎えてしまい、もやもやしたままの二人。

サイの機転でマリューと話をする事が出来、解決の糸口を掴むミリアリア。

一方ディアッカは…?

 

 

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