8,笑顔 1

 
 
 
 
談話室での会議はひとまず終わり、ラクスたちエターナル組はAAから離艦、フラガは医務室に、マリューはブリッジへと戻った。
残されたのは、イザークとディアッカ、そしてミリアリア。
気まずい沈黙が続く。
なにより、我慢する理由のなくなったディアッカが静かに怒りのオーラを漂よわせているせいで、ミリアリアは言葉を発することができず、ひたすらカップの片付けに集中していた。
イザークも気付いていたのだろう、溜息を一つつくと観念したように口を開いた。
 
「アカツキ、と言ったか…。あの金髪のパイロット、どこか怪我でもしていたのか?医務室に向かったようだが…」
 
ディアッカも、それは気になるところだった。
しかし今は、目の前の、もう関係ないはずの女にいろいろ聞きたいことがありすぎた!
 
「…最初から説明すると、すごく時間がかかるんだけど…。ええと、ロアノー、じゃない、フラガさんはMIAとされていた間、地球軍に収容されて記憶を操作されていたんです。それがさっき、AAをアカツキで護ってくれた時だと思うんだけど、記憶が戻って…」
 
ミリアリアはそう言うと不意にディアッカに話しかけた。
 
「ヤキンで、フラガさんがストライクでドミニオンからAAを護ってくれたでしょう?今回ミネルバがAAに同じことをしてきて、アカツキがそれを庇ってくれたの。偶然、同じ状況になったせいだと思うってドクターは言ってた。でも、まだ少し辛いみたいなのよね。だから…」
「…ふーん」
 
ミリアリアから振ってきた会話を、ディアッカは不機嫌丸出しの一言で強制終了させる。
困り顔のミリアリア。
昔だったら、とっくに怒り出してるだろうに。
怒り出してくれりゃ、すぐにでも問いただせるのに。
ああ、もうダメだ、イライラが止まらない!
 
と、ミリアリアが微かにふらつき、カップががちゃりと耳障りな音を立てた。
そういえば、こいつ…。
ディアッカが目を眇めた時、イザークが立ち上がった。
 
「ハウ、すまないが格納庫まで俺たちを案内してくれるか?機体の様子が知りたい」
 
イザークの一言に、ミリアリアは振り返ってホッとしたように微笑んだ。
なんだよ、その顔は。
ディアッカの苛立ちはますます募る。
 
「分かりました。じゃあ行きましょう?ディアッカも行くよね?」
「あぁ?俺は…」
「ディアッカ!行くぞ!」
 
そんな事よりミリアリアだろ今は!空気読めよイザーク!
しかしディアッカの心境など、イザークが気にするわけもなく。
3人は格納庫へと向かった。
 
 
「じゃあ、私は戻ります。用事が済んだら、そこのインターホンでブリッジを呼び出して下さいね」
そう言い残して、ミリアリアは床を蹴り、振り返ることなく姿を消した。
 
「ああもう、ちくしょう!」
 
常に飄々とした態度を崩さない副官が、こうまで感情をむき出しにするのも珍しい。
いつもなら、それは自分の役目だから。
こいつは、いつも俺のことがこんな風に見えているのか…
何度目か数えるのをやめてしまった舌打ちをするディアッカを無表情にイザークは見やり、手元の端末に視線を落とした。
そして、つい今しがた届いた新着メールをゆっくりと熟読し、素早い手つきでロックをかけ保存する。
ディアッカに目を向けないまま、溜息をひとつつき眉間に皺を寄せた。 

 

 

 

 

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2014.6.4up

2014.9.23改稿