28, 言わないで 1

 

 

 

 

※作品内に、一部18禁描写が含まれます。
苦手な方は閲覧をお控え下さい。

 

 

 

 

 
「ミリィ。お前、この後予定ある?」
 
ミリアリアは訝しげに、エアカーを運転するディアッカに視線をやった。
「急いで戻らなくても大丈夫だけど…どうして?」
 
「シホの捜索に、着いてきて欲しいんだ。」
 
ディアッカは前を向いたまま、淡々とミリアリアにそう告げた。
「…いいけど。ちゃんと説明して。犯人が誰だか分かってるんでしょ?」
ディアッカは深い溜息をついた。
 
 
 
「薬物使用に婦女暴行?!」
「ああ。俺がプラントに戻ってすぐの出来事だから。
俺もそこまで詳しくない。軍事裁判中だったしな。」
「…軍事裁判…」
ミリアリアの表情が変わった。
 
「そいつらは、シホの同期で。赤服だったらしいから面識くらいはあったんだろう。
シホより後にジュール隊に配属されたけど、そういう事情でイザークが処分した。」
「処分?除隊とか?」
ディアッカは首を振った。
 
「本来ならな。でもそいつらは、緑に降格の上、ユニウスセブン近くの警備隊に出向になった。
そいつらの親が当時の軍上層部の関係者だったらしくて、イザークもそこまで厳しい処分が出来なかったらしい。」
「そんな…!」
 
 
「完全なる逆恨み、だな。
ソチって奴は薬物に詳しいらしくて、狙った女にいろいろ使ってたらしい。」
「最悪じゃない…」
憤りを隠せないミリアリアだったが、ふと気付いた。
普段あれだけ危険な事からミリアリアを遠ざけるディアッカが、今回に限ってはミリアリアに着いてきてほしいと言う、理由。
 
「…ねぇ。私を連れて行くのって…」
 
ディアッカの顔が顰められた。
「先に謝っとく。お前には悪いと思ってるし、何があっても俺が守る。
だから絶対俺から離れるなよ。」
「…まさか…ディアッカ?」
 
 
「…シホを攫うだけで、そんな奴らが満足すると思うか?」
 
 
ミリアリアの顔色が変わった。
 
 
 
 
「ふっ…く…」
 
シホは身体を這い回る男の手の感触に身震いした。
背中の下にある縄はあれからさらに緩み、あと一歩で拘束が解けるというところまで来ていた。
今はただ、耐えるしか無い。
 
「急におとなしくなったじゃん。観念したわけ?」
ケインの声に、ソチはベッドに横たわるシホから離れた。
「もう、足を離してやってもいいかもな。どっちみちそれじゃ、続きも出来ないだろ?」
「まぁね。でもこいつ、いい足してるよねぇ。いつもスカートでいりゃいいのに。」
シホはその言葉に違和感を感じ、目を開いた。
 
「どうして…私が普段スカートじゃないって知ってるの…?」
その問いに答えたのは、ソチの方だった。
 
「俺たちは、2週間前から本部に入り込んでいた。
お前らジュール隊は目立つからな。いくらでも観察する機会はあったよ。」
「2週間?…そんな長期休暇…」
ケインがにやりと笑った。
 
 
「…俺達、あとちょっとでプラントから出国するんだ。
除隊申請も通ってて、今は有休消化中。
自分らの軍服はもう返しちゃったけど、赤や緑なら裏ルートでいくらだって手に入るんだよね。
真面目なシホちゃんは知らないだろうけどさ。」
「そんな事をしてまで、隊長に?」
その言葉に、ソチの表情が変わった。

 
 
「そうさ。あいつのおかげで俺は家督を継げなくなった。
あのままいけば、世襲で国防委員会入りも夢じゃなかったってのにな。」
「国防委員…?あなた、ギュネイル委員の?…きゃあ!」
 
驚いた声を上げるシホだったが、次の瞬間それは悲鳴に変わった。
ソチがシホの胸を乱暴に鷲掴んだからだ。
 
「い、や…痛い…」
ソチはその言葉には耳を貸さず、白い胸にギリギリと爪を立てる。
「親父の名前を、口にするな。」
「痛い…やめて…」
シホは恐怖に震える声で懇願した。
 
「おいソチ、あんま傷つけんなって。楽しみが減るだろ?」
「…ああ、すまない」
ソチが背後にいるケインを振り返る。
一瞬自分から注意がそれたその瞬間を、シホは見逃さなかった。
 
 
「痛いって…言ってるでしょう!?」
 
 
いつのまにか手首の拘束を解いたシホの渾身の拳が、驚き振り返ったソチの顔面を正確に捉えた。
 
 
 
 
「ディアッカ、まだ着かないの?」
「あと5分かかんねぇよ!つーかお前、あんまりしゃべると舌噛むぞ!」
 
ディアッカは恐ろしい速さでエアカーを走らせていた。
普通なら恐怖で言葉も出なくなるミリアリアだったが、なぜかディアッカが運転しているというだけで落ち着いていられる。
今から自分が向かう先に、何が待っているのか。
先程のディアッカの言葉からは、最悪の事態も想定できる。
 
シホさん…お願い、無事でいて!
ミリアリアは胸元のシートベルトをぎゅっと握りしめた。
 
 
 
 
 
 
 

016

ディアッカの予想に愕然とするミリアリア。

一方のシホも、なんとかこの状況を打開しようとしますが…

しばらく、シリアスなお話が続きます…

 

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2014,7,11up