23, 春の嵐 2

 

 

 

 

頬を赤らめたまま、カガリは言葉を続ける。
 
『和平政策も少しずつではあるが軌道に乗り始めた。
相変わらず地球ではブルーコスモスのテロも起きているが、それも以前に比べたら格段に減った。
だから、その…。
迎えに行くくらい、いいかな、って思って…。』
 
 
だんだんと声を小さくし、最後は口ごもってしまったカガリの胸の内を思い、ミリアリアは心が苦しくなった。
オーブの為に、平和の為に自分個人としての想いを封印し、今も地球とプラントの架け橋となるべく奔走するカガリ。
それがやっと、こうして少しだけでも自分の気持ちに素直になろうとしている。
 
 
「…そっか。うん、いいと思う。アスランは知ってるの?」
優しく微笑んだミリアリアに、カガリはふるふると首を振った。
『まだラクスにしか言ってない。
あいつ、お忍びでいらしたら?なんて言ってたけどな』
 
その言葉に、ミリアリアの碧い瞳がきらりと光った。
 
 
「それよ、カガリ。」
『それ?』
「お忍び!どうせアスランが知らないんなら、驚かせましょ?」
『は?ミリアリア?!』
 
驚き慌てふためくカガリを前に、ミリアリアはうーん、と頬に手をあてて何事か思案する。
 
「今のところ、カガリがこっちに来る事を知っているのはラクスだけ?」
『…ああ。でも多分、キラも知ってると思うぞ?』
「ならまだ間に合うわよ!ね、そっちはどうにかなりそう?キサカさんとか。」
『調整はつくと思うが…本気か?』
ミリアリアはにっこりと微笑んだ。
 
「もちろん!あ、でもディアッカには話してもいい?
アスランへのフォローをお願いしたいから。」
 
『ミリアリア…』
不安げなカガリに、ミリアリアはばちん、とウインクを送る。
 
「大丈夫。アスランはびっくりするかもしれないけど、絶対怒ったりしないわ。
だから、やりましょ?サプライズ!」
 
カガリが泣きそうな顔で微笑み、こくりと頷いた。
 
 
 
 
数日後。
クサナギがプラントへ到着する日がやって来た。
今回の訪問は、キサカが在プラント、オーブ総領事館を非公式に視察に訪れるという事になっている為、停戦協定の時のような大掛かりな警備体制は敷かれていない。
それでも、オーブの重要人物の訪問には変わりがない為、ステーションにはジュール隊をはじめとするザフト軍の兵士達が警備についていた。
 
ミリアリア達総領事館の職員は、エアポートの控え室でクサナギの到着を待っていた。
部屋には、ラクスとキラ、アスランの姿もある。
 
 
「カガリさんとはもうお話されましたの?アスラン?」
ラクスの無邪気な問いかけに、アスランはびくりと身を強張らせる。
「あ、ああ。一度ヴィジホンで。」
「そうですの。良かったですわね?」
天使のような微笑みを浮かべるラクス。
キラが思わず、ぷっと吹き出す。
「ラクス!俺は別に…」
 
アスランがそこまで言った時、控え室にノックの音が響き渡った。
 
 
「間もなくクサナギが到着します。皆様はエアポートまでお越し下さい。」
 
 
ドアの向こうに現れたシホの言葉に、一同は立ち上がった。
 
 
 
 
「久しぶりね…。」
エアポートに静かに入港してきたクサナギの姿に、ミリアリアは思わず隣にいるサイにそう話しかけた。
「ああ。やっぱり大きいな。」
サイも眩しげにその姿を見つめる。
ふとアスランを見ると、何とも言えぬ表情でその光る艦体を見上げていた。
まさか、この中にカガリが乗っているとは思うまい。
ミリアリアはくすりと笑って、すぐにクサナギに視線を戻した。
 
 
クサナギのエンジンが止まり、ミリアリア達は搭乗口前まで移動する。
そしてほどなく、ゆっくりと扉が開き、キサカの姿が現れた。
 
「キサカ殿…」
 
アマギが小さく呟く。
ミリアリアも、胸が詰まる思いでその精悍な姿を見上げた。
 
二度の大戦をAAとともに駆け抜けた、オーブの艦。
思わずもう一度クサナギの艦体に目を向けたミリアリアだったが、視線の隅で何かがきらりと光った事に気がついた。
…今のは、まさか?!
慌ててもう一度目をやると、エアポートの左隅にある展望台の窓に、またもきらりと光る何かを見つける。
 
 
「キサカさん戻って!!狙われてます!!」
 
 
ミリアリアの悲鳴のような声と同時に、キサカが素早く後ろに飛び退る。
次の瞬間、鋭い銃声がエアポートに響いた。
 
 
 
「何だ、今の銃声は?!警備兵は何をしている!」
イザークの怒鳴り声。
「イザーク!撃たれたのは展望台からよ!早くそっちに!」
サイの背中に庇われたミリアリアの言葉に、イザークだけでなくディアッカも驚いて振り返った。
そして、シホは何も言わず展望台に向かって走り出す。
 
「ミリィ…なんで…」
「今はそれどころではないだろう!行くぞディアッカ!!」
そう言うや否や、シホの後を追って駆け出すイザーク。
 
「ディアッカ!私は大丈夫だから、早く行って!」
そう言って力強く頷くミリアリア。
 
「悪い!サイ、頼むぜ!」
ディアッカは一言サイに声をかけ、イザークの後を追った。
 
 
 
 
 
 
 
016

事件発生、です。

 

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