「ようこそ、AAに」
飄々とした表情でそんなとぼけたことを言う腕利きの操舵士にディアッカは手をあげて笑顔を向けた。
そしてイザークはますます仏頂面になる。
そんなイザークをちらりと見やり、ディアッカは肩を竦めた。
こいつは、ラクスが来るまでずっとこの調子なのだろうか?
ノイマンの白い軍服に、何と無く違和感を感じる。
すると、ノイマンが今気がついたように言った。
「なんだ、お前軍服変わったのか?」
…違和感は、お互い様らしい。
「おひさし、ノイマンさん。元気してた?」
「ああ、何度か死にかけたがまぁ元気だな。お前も無事で何よりだ」
「なに?また艦長さん無茶な命令飛ばしたの」
「…俺たちのやってること自体が大抵無茶だろう。ああ、バレルロールならしてないぞ。あれは一度で充分だ」
イザークが訝しげに、バレルロール…?と小声でつぶやくのが可笑しく、ディアッカは談話室への道すがら、この操舵士の武勇伝を披露する。
唖然とするイザーク。
「重力下での…バレルロールだと?正気か?」
「ザフトの操舵士でも、ノイマンさんレベルはそうそういないんじゃねぇ?何なら研修頼んじゃう?」
あり得ない冗談。
曲がりなりにも、つい先程まで武器を向けあっていた相手に、何を言っているのだこいつは!
そう思い、ますます不機嫌になるイザークをちらりと見やってノイマンが口を開く。
「…そう遠くない未来に、そういうこともありえるかもな。停戦したんだから」
虚をつかれたように、イザークとディアッカはノイマンを見た。
「戦争は終わる。コーディネーターとナチュラルが手を取り合い、未来を作る。ラクス・クライン嬢はそんな世界を目指してるんだろう?そして君たちは、その理念を是とした。だからエターナルを護った。違うか?」
ぽかんとする若きザフトの士官たちを見つめ、くすりと笑ってノイマンは続けた。
「そんな未来を夢見たっていいじゃないか。世界はこれから変わって行くんだから。いや、君たちが変えていってくれるんだろ?」
…まったく。食えない男だぜ!
あのイザークまで、神妙な顔で黙ってしまった。
「そうそう、お前がここにいた頃にはなかった施設が2、3増えてるんだ。良かったら後で案内させよう」
誰に?
そう聞けない自分を、ディアッカは情けなく感じる。
そうしているうちに、程なく談話室に到着した。
「間も無くラクス嬢たちも到着するそうだ。こちらも…」
ノイマンが話し終える前に、ディアッカたちの後ろからひどく懐かしい声が割って入った。
「おっ、でーっかくなっちゃったじゃないの!久しぶりだな、坊主!」
そんな馬鹿な。
ディアッカの脳裏に、先の大戦で光とともに散ったMSの姿が浮かぶ。
まさか、そんな。
そうっと後ろを振り返った、その視線の先に。
昔よりだいぶ伸びた金髪に、大きな顔の傷が目立つものの、かつて自分とともにAAを護った、ここにはもういないはずの男の姿と。
オーブの白い軍服に身を包んだ、茶色い外跳ねの髪と美しい碧い瞳の少女が、大きな目をさらに見開いてディアッカを見つめながら、立っていた。
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2014.6.3up
2017.9.1一部編集