バスルーム 1

 

 

 

 
「ミリィ、だいじょぶ?」
「うん…。こんなことってあるのね。びっくりしちゃった」
 
 
今日の天気は、晴れ、のはずだった。
プラントでは予め日々の天気が決められている。
しかし、所詮は人の手により作られたシステム。
誤作動が生じることもある。
そしてまさに今日、その誤作動が生じた。
 
久し振りに休みが重なったディアッカとミリアリアは、連れ立って食事に出かけていた。
普段はエアカーでの移動がほとんどなのだが、気候も良く、天気も良いと言うことで徒歩で出掛けたがったミリアリアに、ディアッカは笑顔で頷いた。
しかし、急遽起こったシステムの誤作動により、のんびりとアパートへ向かって歩いていた二人を突然の豪雨が襲ったのだった。
 
 
「ほら、もう面倒だから一緒に風呂行こ」
ディアッカはそう言ってミリアリアをひょいと抱き上げた。
「きゃっ!な、なんで?」
「二人で歩くより、こうすれば床も濡れないだろ?」
「…ただの屁理屈よ、それ…」
呆れるミリアリアにいたずらっぽく微笑みかけ、ディアッカはそのままバスルームまで向かう。
「ごめんねディアッカ…やっぱりエアカーにすればよかったね。寒いでしょ?」
自分に上着を貸してくれたせいでアンダーが透けるほどずぶ濡れのディアッカに、すまなそうな顔を向けるミリアリア。
ディアッカは苦笑する。
「あのな、俺は丈夫にできてんの。それよりお前の方がよっぽど心配なんですけど?」
ディアッカはそう言いながらバスルームに入ると、ミリアリアをそっと床に降ろし、濡れて重くなったシャツを脱ぎ捨てた。
そのままジーンズに手をかけようとし、ふとミリアリアを見ると、びしょ濡れのまま俯いている。
 
「ミリィ、何してんの?」
「…何か、明るいし恥ずかしい…」
 
これまで何度となく身体を重ねているのに、なんで今更恥ずかしがるんだろう。
まぁ、そこもかわいいんだけど。
ディアッカはしばらく思案し、ミリアリアに向き直るとワンピースに手をかけた。
「きゃっ!」
「…さすがに何もしねーから。早く温まらないとマジで風邪ひくぜ?」
「うん…ごめん…」
ミリアリアはディアッカにされるまま、素直に濡れた洋服を脱いだ。
 
 
浴室暖房に加え、先にシャワーから湯を出しておいたせいで、浴室はだいぶ暖まっていた。
「ミリィ、ほら」
ディアッカはミリアリアを引き寄せ、一緒にシャワーの真下へ入る。
ミリアリアの体は冷たかった。
 
早く温めないとマジで熱出すな…。
 
ディアッカはミリアリアを抱き締めた。
「ディアッカ…?」
「この方が早く温まるだろ?」
嫌がるかと思ったが、ミリアリアはぽふん、とディアッカの胸に頭を預けた。
そしてそっと、ディアッカの腰に手を回す。
 
「ミリィ?」
「誤解しないで、欲しいんだけど」
「…ん?」
「…別に、何かされるの、嫌じゃない」
 
ディアッカは、ミリアリアの絡まった髪をシャワーでそっと解いた。
「うん」
ミリアリアの腕に、力が篭る。
 
 
「ディアッカになら、何をされても、嫌じゃないから…」
 
 
ミリアリアの髪を解くディアッカの手が、ピタッと止まった。
ミリアリアは、自分の言葉に照れているのだろう。
しがみついたまま、ディアッカの方を見ようとはしない。
ディアッカの手が、ミリアリアの頬にそっと触れる。
そのまま顎に手を滑らせ、ミリアリアを上向かせた。
ミリアリアは頬を染め、恥ずかしそうにディアッカを見上げる。
その無防備な表情にディアッカの心臓が跳ねた。
 
 
何もしない、はずだったんだけどな。
 
 
切なげな紫の瞳が、ゆっくりミリアリアに近づく。
ミリアリアはそっと瞳を閉じた。
 
 
 
 
 
 
 

ma02

500hit記念の小噺を下さったEMC様より、555hitキリリクを頂きました!

内容はずばり、ミリアリアからディアッカへご奉仕v

しかも、恥ずかしがりつつも自分の意思で!

長編の補完小説中にもいずれ出てくるエピソードですが、それはまたいずれ…(笑)

今回の話は、全三話で完結予定です。

 

request  次へ

2014,6,30up