言葉 3

 

 

 

 
「ミリアリアを、プラントに?」
 
  
それまで黙っていたキラが声を上げた。
 
  
「ああ、そうだ。二人で話し合ってそう決めた。
ミリアリアをプラントに連れて行く。
俺の、婚約者として。」
 
  
その場にいた、マリュー以外の誰もが息を呑んだ。
ラクスでさえも「まぁ…」と言ったきり言葉を失っている。
そしてバルトフェルドは、ディアッカを見てにやりと笑った。
 
  
「婚約者、ねぇ・・・。
コーディネイターで、ザフトの軍人であのエルスマン家次期当主である君が、
あのAAのCICで、戦場ジャーナリストで、中流家庭出身のナチュラルの女性と結婚する、と。
それがどれだけのリスクを抱えるか、分かって言ってるのかね?エルスマン。」
 
 
ミリアリアがもし聞いたら打ちひしがれるであろう、意図的としか思えない言葉の選び方に砂漠の虎の真意が見えず、イザークの目が鋭さを帯びる。
しかし、ディアッカはゆるりと微笑んだ。
その微笑みはミリアリアに向けられるそれとは程遠く。
知略に長けた、好戦的な軍人の笑み。
口調が一気に砕けたものに変わったのも、また意図的だろう。
 
  
「もちろん。それが大変な事だってのは分かってる。
いくら言葉を尽くしても、ナチュラルとコーディネイターの確執を無くす事は難しい。
だからって、そんな理由でみんな大事なものを諦めるわけ?」
 
 
アスランが顔を上げ、ディアッカを見た。
そんなアスランにも良く聞こえるように、ディアッカはいつもの口調で続ける。
 
 
「俺は諦めないぜ?
きっと大騒ぎになるだろうし、危険な目にあったり辛い思いをすることもあるだろう。
それでも俺は、あいつを連れて行く。
あいつも俺についてきてくれる。」
 
 
だから、アスラン。
お前も、迷うな。
 
  
ディアッカはそう思いを込めてアスランを見つめ、再びモニタに向き直った。
 
 
 
「俺は、コーディネイターとナチュラルが平和に暮らせる世界を作ると決めたんだ。あいつや、ここにいるみんなや、イザークと一緒に。」
 
 
 
勝手に決めやがって、あいつめ。
イザークが、ディアッカの後ろで呆れたように微笑んだ。
 
 
 
  
「ラクス嬢、頼みがある。」
「はい?」
ラクスが首を傾げる。
 
 
「その・・・、協力、してほしい。
情勢が落ち着くまででいい。ミリアリアがプラントで危険な目にあわないよう。」
 
  
目を見開くラクスに、ディアッカは畳み掛けるように言葉を続けた。
「もちろん、俺があいつを守ることが大前提だ!それでもやっぱり、行き届かないこととかあるだろ、その・・・」
そんなディアッカらしくない、歯切れの悪い口調にラクスは愉快そうな表情になるのを抑えられなかった。
 
 
「承知いたしましたわ、ディアッカさま。」
 
 
「ラクス!」
キラが咎める様に声を上げる。
「キラ。ディアッカさんを信用できませんの?」
まっすぐな瞳でそう問いかけられて、キラは口ごもる。
「そうじゃないけど、でも・・・」
「わたくしは、ディアッカさんを信じます。
地球で再会したミリアリアさんと今のミリアリアさん、どちらがお幸せそうに見えますか?」
 
 
キラは思い出す。
AAに乗艦した頃のミリアリアは、明るく元気に振舞っていてもどこか物憂げで。
よく展望室から空を見ていた。
宇宙に出てからもそれは同じ。
時間があれば星をずっと見ていた。
あれは星じゃない、彼を・・・ディアッカを見ていたんだ。
 
  
「ディアッカ。」
「・・・なんだよ」
 
キラはキッとディアッカに鋭い視線を送る。
 
「ミリィは、僕の大切な友達だ。
ヘリオポリスから今まで、どんなにミリィに助けられたか僕は分からない。」
トールのことも、フレイのことも・・・。
大切な人、大切な親友。
キラの目が熱くなる。
 
  
「いつだってミリィは僕の味方でいてくれた。
自分は我慢ばっかりするくせに。」
ディアッカは、黙ってキラの言葉を聞いている。
 
  
「たくさん我慢した分、頑張った分、ミリィは、絶対幸せにならなきゃいけない。
ディアッカ、できる?
ミリィをひとりにしない、悲しませないって僕に約束出来るの?」
 
  
キラがディアッカを射殺すように見つめる。
ディアッカは、その美しい瞳に強い決意を宿してキラを見つめた。
 
  
「ああ。約束する。お前の大切な友達を、俺は絶対に幸せにする。」
 
  
キラの瞳から鋭さが消えた。
「ラクス、僕からもお願い。
ミリィを助けてあげて。」
 
 
ラクスはにっこり微笑んだ。
「もちろんですわ、キラ。」

 
 
 
 
 
 
 
 
016

本編ではほとんど描写がなかったけど、ミリィって愛されキャラだと思うんですよね。

そして、ラクスとはまた違った絆も、キラとの間にはあるはず。

 

 

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2014,6,11up 

2014,8,5台詞一部訂正