エターナルの偵察部隊から、いまだ連絡はない。
AAで状況を見守るマリューの表情にも、さすがに焦りの色が見えていた。
と、コンソールに向かっていたチャンドラが声を上げた。
「艦長!入電あり!暗号文です!」
「発信元は?」
「不明です!…が、これは…アーガイルです!サイ・アーガイルからの暗号文です!」
ブリッジが色めき立った。
ノイマンがたまらず振り返る。
「解読急いで!エターナルとディアッカ君たちにも連絡を!」
「了解!」
宇宙で待機中のディアッカ達にその知らせが届いたのは、暗号文の解読が完了してすぐのことだった。
『サイ君から、暗号文での入電がありました。』
マリューの言葉に、ディアッカ達は一様に驚きの表情を浮かべる。
『サイのやつ、どうやって…』
イザークの呟きは、そのまま皆の気持ちであろう。
『手短に話を進めます。
まず、彼らとその周りの状況から。
カズイ・バスカークを発見、無事合流。
イージス、デュエル、バスター実機確認。
…いずれも核搭載済。』
マリューはそこで一旦言葉を切る。
『サイ君は腹部の打撲のみで軽傷。
活動に問題なし。
ミリアリアさんは左肩負傷。
出血がやや多量だが命に別条無し。
すでに意識回復。起立、歩行可能。
…だそうよ。良かったわね、ディアッカ君。』
その言葉に、パイロットやクルー達の空気が一瞬緩む。
言葉には出さずとも、皆ミリアリアとサイを案じていたのだ。
にこりと微笑むマリューに、ありがとうございます、とディアッカは敬礼で答える。
表情はいつものままであったが、それでも安堵のあまり、微かに手が震えた。
『それでは続けます。Gシリーズの状況よ。
核の搭載、整備もほぼ完了。
パイロットは地球軍の…エクステンデッド部隊との情報あり。』
『なんだって!?』
フラガの顔色が変わる。
マリューはそんなフラガを気遣うようにまた少し言葉を切ったが、すぐそのまま続きを読み上げた。
『エクステンデッド部隊が到着次第、Gシリーズはプラントに向け発進すると予想される。
ついては、我々も行動を開始する。
行動予定は次の通りである。
速やかなテロリストおよび…』
そこまで読み上げて、マリューが驚いたように目を見開き、言葉を止めた。
『ラミアス艦長?』
イザークが続きを促すと、気を取り直したかのようにマリューは続きを読み上げた。
『速やかなテロリストの制圧、および、万が一の到着時にはエクステンデッド部隊の制圧を願う。
我々は、Gシリーズ3機体の爆破、破棄を決行する。』
ディアッカは思わず声を上げた。
「爆破、破棄ぃ!?」
サイのやつ、なに考えてんだ?
『…この電文、返信はできないの。多分あっちのサーバーにハッキングして送信したんでしょうね。
要は、こちらが納得しようとしまいと、サイ君達は動く。
ここに書かれている内容、これは言ってみれば彼らのタイムスケジュールね。』
『具合のいいところで、拾いにこいと。そういうわけか…』
イザークも驚いたようだったが、顎に手を当て何事か思案している。
そして。
『ラミアス艦長、続きを。
自分とディアッカは、彼らの作戦を支持します。』
一瞬目を見張ったマリューが、くすりと笑う。
『まだ、内容も聞いてないのに?』
イザークは不敵な笑顔で答える。
『聞かなくてもわかる。どうせ無茶苦茶な、綻びだらけの作戦だろう。
が、俺たちがその綻びを繕えばいい。
そうでしょう、ラクス嬢?』
『…イザークさん、ありがとうございます。その通りですわ。
彼らも、プラントを守ろうと動いてくださっています。
わたくし共は、テロ制圧部隊を派遣致します。』
エターナルにもこの通信は届いていたのだろう。ラクスの涼やかな声がコックピットに響いた。
『フラガ一佐やキラ君たちも異存はないかしら?』
マリューはしっかり確認する。
『エクステンデットに関しては、俺に任せてもらいたい。それなりの知識は嫌でも持ってるんでね。』
フラガがモニタの向こうで肩を竦める。
キラとアスランも、深く頷いた。
『サイ達が頑張ってくれるのに、同じカトーゼミのメンバーとして協力しないなんて、トールに合わせる顔がないですよ。
だから、やります。
トールなら多分、やれって言ってくれる。プラントを守れって。
そういうやつでしたから。』
マリューは、きっと前を見据えて口を開いた。
『みんな、感謝します。
それでは、作戦の詳細を説明します!』
***
時はしばらく遡り。
カズイが2人に、自分の考えを話していた。
「まず、なんとかしてここを脱出する。
Gシリーズが保管されている格納庫は、二つ隣の建物なんだ。
そこに行って、Gを僕たちが起動させて自爆装置のセッティングをする。
タイマーは30分までしか設定できないから、その30分の間にこのコロニーを脱出する。
これが、基本の流れなんだけど…。」
「いくつか、難しい点があるね。」
サイが口に手を当て考えこむ。
「ここから格納庫まではともかく、コロニーからの脱出経路が確保出来ていない。
Gシリーズを俺達が弄れるか、っていうのも気になるところだけど…」
ミリアリアもうーん、と考え込んでいたが、すぐに口を開いた。
「Gの起動くらいは出来ると思うわ。
バスターのコックピットを何回か見たけど、計器類も一応見たことがあるものばかりだったし。
それより、エクステンデット部隊が到着する前に出来れば装置を動かしたいわよね。
そいつらに乗られちゃったら、もう手が出せなくなるもの。
タイミングが難しい。けど…」
ミリアリアは、ベッドから降りて窓辺に歩いて行くと、空を見上げた。
「…サイ、数分でいいからハッキングできないかな?」
「え?」
「この作戦内容をAAに暗号文で送るのよ。
きっとマリューさんが解読して、ディアッカやフラガさんに連絡するわ。
ラクスにも!
そうしたらきっと、ディアッカ達はこのコロニーに降下してくる。
脱出経路の確保、出来るじゃない!」
「ミリィ…でも…」
サイは躊躇った。
もし暗号文が届かなかったら?
降下時間がずれたら?
そんなサイを、碧い瞳が捕らえた。
「大丈夫。ディアッカも、他のみんなも絶対助けに来てくれる。
あなたと私と、カズイがここにいるんだもの。
キラだって、来ないわけないじゃない?」
サイは両手を上げて、降参の意を示した。
「わかった。やってみるよ。」
トール、俺たちを守ってくれよな?
サイは心の中で、空にいる親友にそう祈った。
2014,6,10up