この短時間で、そこまで!?
ブリッジが驚きに包まれる中、バルトフェルドだけがニヤリと笑い、続きを促す。
「ディスクの中身全部をチェックしたわけではもちろんありませんし、機体の判別までは至っていません。ただ、そこまで重要な情報ではなさそうです、これ。私一人だとちょっと時間がかかりますけど、あとは言語ロックを解除すれば、マリューさんやマードック曹長もよく知る内容のデータが出てくると思います」
バルトフェルドは顎の下で長い指を組み、それから?とミリアリアに更なる先を促した。
「データの重要性は低くても、これである程度誰がどの機体を弄ってたか分かるかもしれないんです。キラ、あとアスランとジュールさん、ディアッカの協力が必要ですが…」
「俺たち?」
ディアッカとイザークは思わず顔を見合わせた。
いくらコーディネイターとはいえ、ディアッカもイザークも設計分野に関しては専門外だ。
機体のメンテナンスはお手の物だが、一つ一つのパーツについてとなるとやはりマードック達の方が精通しているし、設計に関してはかろうじて図面を読み取ることができる程度。
イザークも大差ないだろう。
キラはカトーゼミのゼミ生であったから即戦力であろうし、アスランはあのハロを作るくらいだから多少の知識はあるだろうが。
「お嬢さん、良ければ今ここでディスクの中身を出してもらえないかね?ナチュラルの中でも特に優秀な、君の見解に興味があるんでね」
ミリィの何を知りたがっている?この虎は。
鷹揚に、そんな事を言い出す砂漠の虎をディアッカは訝しげに見やる。
「優秀じゃありませんってば、もう・・・。ただのナチュラルですよ、私」
困り顔でそう答え、ミリアリアは手早くコンソールにディスクをセットした。
すぐにプロジェクターが起動し、一面に見たことのない言語が映し出される。
「サイが来るまでに、私ができる範囲でちょっといじってみたんです」
ミリアリアはキーボードに指を走らせ、コーディネイターのような早い動きではないものの慣れた手つきで画面をスクロールする。
その時、エターナルのブリッジにアスランが現れたのがわかった。
先に帰艦したのだろう。
バルトフェルドがアスランにこれまでの話を説明する。
「アスラン、ちょうどよかった」
ミリアリアもアスランに気づいた。
「三人に聞きたいのは、ヘリオポリスで最初にGを起動させて、OSを書き換えた直後のことなの。たとえば、機体の右腕に違和感を感じたとか…」
ひゅっと、息を飲む音が聞こえた。
ディアッカだった。
「…確かに、初めてライフルを使う時違和感を感じた。対した障害じゃなかったが、焦って微調整するか迷ったのを覚えてるぜ」
ミリアリアはなんとも言えない表情で、ディアッカに向き直った。
「バスターが…。そう」
「…なんだよ?」
「ううん。まだ色々検証が必要だけど、一つ分かった。バスターの上半身部分、特に可動部の設計はトールよ。」
「は?」
「だって私、トールに泣きつかれて可動部の図面引いたもの。そこからトールに引き継いだ。あとは操縦者の動きに合わせて微調整、ってとこまで行っていたと思うわ、確か」
この意味不明な言語の中から、そこまで読み取れるのかよ!
ディアッカは内心嘆息した。
「トールのクセみたいなもんね。後方への可動率が毎回どこかしらちょっとずれてるの。もしかしてと思って構造計算してみたんだけど…」
バルトフェルドが口を開く。
「流石だね、お嬢さん。いや恐れ入った。美人で優秀な人材を見ると、エターナルに引き抜きたくなりますな、ラクス嬢?」
「あら、ミリアリアさんはもう売約済みですわ、きっと」
ラクスの視線がディアッカを捕える。
ね?と言外に言われているような気がしたが、とりあえず対外向けの極上の笑みを顔にはりつけ誤魔化す。
「美人でもなければ優秀でもないんですってば!真面目に聞いてくださいっ!」
ラクスの視線に気づいたらしいミリアリアが顔を赤らめ、改めて解析結果の説明を続ける。
初めて見る、意外な一面。
そんなミリアリアが、なんだか眩しく見えたディアッカであった。
2014,6,10up
2017,9,23改稿