ホット・ラム・ティー 4

 

 

 

 
「シャワー、ありがとう。シホさん。」
 
ミリアリアがシホの家に転がり込んでから、およそ1時間後。
バスルームから出て来たミリアリアは、シホが手渡したシンプルなVネックのワンピースに着替えていた。
普段ミリアリアがあまり選ばないデザインのものだが、柔らかいアイボリーのワンピースは借り物とは言えミリアリアにしっくりと似合っていた。
 
「ごめんね、服まで借りちゃって…」
 
ミリアリアはソファにちょこんと座り、すまなそうにシホを見上げる。
「落ち着きましたか?」
微笑んだシホが差し出した、耐熱グラスに入った温かい紅茶を受け取りミリアリアはそっと口を付けーー驚いたように目を見開いた。
 
 
「これ…お酒?」
「ええ。アールグレイにラム酒と果物のシロップを入れたカクテルです。
本当はもっとちゃんとしたレシピがあるんですけどね。」
ミリアリアはもう一度口を付け、ほっと息をついた。
 
「これ…美味しい。温かいカクテルって初めて飲んだわ。」
「お口にあったようで何よりです。隊長から教わったものなんですよ、これ。」
「イザークから?」
 
確かに、酒豪のエザリアを母に持つイザークならば、こういった知識もそれなりにありそうだ。
ミリアリアはそう考え、くすりと笑った。
 
 
「…シホさん。イザークって優しい?」
「はい?!」
突然の質問に、シホは目を白黒させた。
「聞くまでもなく、優しそうよね。仕事中はきりっとしてるけど。
きっとシホさんと二人の時は全然違うんだろうなぁ…」
「あの、ミリアリアさん?」
 
「…ディアッカね、今日、怒ってたの。」
 
ミリアリアはぽつりぽつりと、今日帰宅してから自分がここに来るまでの経緯を語り始めた。
 
 
「いつもと違って、ひどく乱暴で…。おろしたてのストッキングは破られちゃうし、意地悪な事ばかり私に言わせたがって。
それで、私もつい思ってもいない事、言っちゃったの。」
「何を…言ったのですか?」
シホは話を聞きながら、ミリアリアの空になったグラスを取り上げ、素早く同じものを用意し差し出した。
 
「…こういう乱暴な行為に満足してくれるような女の所にでもどこにでも行けばいい、って。
私も止めないから、って。そう言ったわ。」
 
「それで、彼は?」
シホの静かな声。
「怒ったまんま、シャワーに行っちゃった。その間に上着だけ羽織って出て来たの。
でも、行くあてもなくて結局ここに…。」
「そう、ですか。」
 
シホはそう答えると、ぐいっとカクテルを飲み干す。
そして、さっさと自分でおかわりを作り、それにも口を付けた。
 
「そうなった理由は?ディアッカは何も言っていなかったのですか?」
ミリアリアも一気に半分以上グラスを空け、溜息をついた。
「うん。分からないまま…。」
 
 
「…彼の事、嫌いになりました?」
 
 
シホの言葉に、ミリアリアは驚いて顔をあげた。
 
「そんな訳ないわ!嫌いになんてなれるわけない!」
「怒りの理由がわからないまま、一方的に乱暴なことをされても?
少なくとも私は、隊長からそのような態度を取られたことはありませんよ?」
 
いつになく鋭い、シホの詰問。
ミリアリアは手の中のグラスを握りしめた。
 
 
「確かに今日は意地悪だったし、怖かったけど…ディアッカだって…本当はすごく優しいもの。
私のこと、大切にしてくれてるもの!」
必死でそう訴えるミリアリアに、シホはふわりと微笑んだ。
 
 
 
「他の女の所になんて、行ってほしくなかったんでしょう?」
 
 
 
ミリアリアはグラスを手に、しょんぼりと頷く。
「行って…欲しくなんてない。
でも、気づいたら逆の事言っちゃってて、それも悲しくて、悔しくて。」
 
「悲しくて、悔しい?」
 
ミリアリアは少しだけぬるくなったカクテルの残りを一気に飲み干した。
 
 
「怒ってる理由も教えてもらえないまま乱暴にされたのも、自分からしてきたくせに私から…して、って言わせようとしてるのも悔しかった。
でも、ほんとはどこにも行ってほしくないのに、他の女の所に行けばいいなんて言っちゃって。
自分で口にしたくせにそれがすごく悲しかったの。」
 
シホは黙ってミリアリアの言葉を聞いている。
 
 
「ディアッカの事が好きだから、こうして結婚して一緒にいるのに…。
それなのに、なんでこんな事言わなきゃいけないのって思って、悔しかった。
それで、ディアッカがいない隙に家を出て来たの…。」
 
 
 
 
「……ですってよ?ディアッカ。」
 
 
 
 
シホが立ち上がり、リビングのドアに向かう姿をミリアリアはきょとんと見つめる。
がちゃり、とシホがドアを開けると。
 
 
そこには、複雑な表情を浮かべたディアッカが立っていた。
 
 
 
 
 
 
 
007

ミリアリアがシホに吐露した本音。

それにしても、今回のシホはいい女です…v

 

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2014,7,23up