ホット・ラム・ティー 3

 

 

 

 
「はぁ…はっ…」
 
オーブ総領事館の前。
全速力でここまで走って来たディアッカは、さすがに息を切らせていた。
汗が額を流れ落ちる。
以前、些細な事で喧嘩をした時、ミリアリアが出て行った先がここだったのだ。
最も、プラントに知り合いの少ないミリアリアが逃げ込める場所など、そうそうあるはずもないのだが。
 
 
ディアッカは総領事館を見上げた。
どの窓からも灯りは漏れておらず、門にはしっかりと鍵がかかり、入口付近にはセキュリティシステムが作動している事を示す赤いランプが灯っている。
どう見ても、人のいる気配はない。
 
 
ここじゃ、ないのか?
 
 
だとしたら…ラクスの所?
ディアッカはそう考え、思わず首を振った。
ラクスは父の残した私邸をいくつか持っており、セキュリティの都合上一般にははっきりとした居場所を明かしていない。
イザークやディアッカなど、ラクスの警護に当たるものであれば知り得る情報だが、突発的に出て行ったミリアリアがそれを知り得るとは考えにくかった。
キラに連絡を取れば、あるいはーーとも考えたが、生真面目なミリアリアがこんな時間に恋人のいる男に電話をかけるという事も考えにくい。
サイやアマギも同様だ。
仕事に私情を持ち込みたがらないミリアリアの性格を、ディアッカはよく知っていた。
 
だったら、ミリアリアはどこに消えた?
あんな格好で、夜の街をうろついてるって言うのか?
 
 
 
まさか……誘拐!?
 
 
 
ディアッカの顔色が変わった、その時。
ジーンズのポケットに無造作に突っ込んでいた携帯が、震えた。
 
 
「おい!ミリィ?!お前どこにいるんだよ!」
着信画面を確認する事も忘れ、通話ボタンを押したディアッカは一気にがなり立てた。
通話口からは、しばらく沈黙が続きーーー。
 
『お前こそ、どこで何をしているんだ?ディアッカ。』
 
聞こえて来たのは、落ち着き払ったイザークの声、だった。
 
 
「イ…イザーク…?」
『ああ。なんだ?ミリアリアがどうかしたのか?』
「いや、その…ちょっと喧嘩して。あいつ、出てっちまって…」
『ほう?それで外を探しまわっているところか。』
 
ディアッカはゆるゆると息をついた。
 
「ああ。どうせ総領事館あたりに行ったんだろうと思って来てみたんだけど、そこにもいねぇんだ。」
『…それ以外に、お前には心当たりがないのか?』
「心当たり?」
通話口から、イザークの溜息が聞こえた。
 
『どうせ、誘拐でもされたのではないかと焦っていたのだろう?
全く、そんな事なら最初から喧嘩などしなければいいものを。この馬鹿者が。』
「馬鹿者って、お前なぁっ!」
喧嘩の原因ーー完全にディアッカの勝手な嫉妬なのだがーーとなった相手に小馬鹿にされ、思わずディアッカは声を荒げた。
 
 
『くだらん嫉妬などするからだ。あの程度の事で目くじらを立てていては、いつかミリアリアに愛想を尽かされるぞ?』
 
 
「なっ…」
ディアッカは言葉を失った。
 
 
『俺は任務としてミリアリアと一日行動を共にした。そこにはなんの私情もない。
そもそも、俺にはシホというれっきとした相手がいるし、親友の妻をどうこうするほど飢えてもいないわ、このボケが!』
「イザーク…なんで…」
『分かりやすいんだよ、お前は!あんな目で見られてみろ!
気付いていないのはミリアリア本人ぐらいだ!』
ディアッカは、昼間の自分を振り返ってみる。
…そして、がっくりと項垂れた。
 
「…わりぃ、イザーク。」
『ふん!その台詞はミリアリアに言ってやるんだな。
何をしたのかは知らんが、相当落ち込んでいたようだったぞ?』
「ああ、そうする…って、は?!」
ディアッカは思わず携帯を握りしめた。
『何だ。』
「お、おまっ、まさか…」
しばしの沈黙の後。
 
 
『ミリアリアの居場所か?もちろん知っているがそれが何か?』
 
 
ふふん、と勝ち誇ったようなイザークの声。
ディアッカは今度こそ、絶句した。
 
 
 
 
 
 
 
007

ミリアリアが見つからず、焦るディアッカ。

そしてイザークからの電話。

…イザーク、ちょっと怒ってます(笑)

 

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2014,7,22up