求婚 4

 

 

 

痛いほどの沈黙が、部屋を支配した。
ミリアリアは、深く頭を下げたまま動かない。
よく見れば、その体は微かに震えている。
その、震える肩に暖かい手が置かれた。

 

「顔を上げたまえ。」

 

ミリアリアは弾かれたように頭を上げた。
すぐ近くに、ディアッカと同じ紫の瞳があった。

 

「ディアッカの事を、そんなにも大切に思ってくれて、ありがとう。
…最後にひとつ、聞かせて欲しい。」
ミリアリアは黙ってタッドを見上げる。

 

「停戦協定は結ばれたものの、未だここプラントにも、ザラ派の残党がいる。
ナチュラルである君と、コーディネーターであるディアッカの婚約、結婚ともなれば、妨害が入る可能性もある。
それこそ、私たちやディアッカも危険に晒される可能性すらあり得る。
君は、その時どうするつもりだい?」

 

ミリアリアは、自分でも気がつかないうちに微笑んでいた。

 

 

「ディアッカが、守ってくれると約束してくれましたから…それを信じてます。
私も、出来る範囲でディアッカとエルスマン議員を守ります。
それでも、お二人が危険に晒される時は…。
私が、身を引きます。
それでお二人が助かるなら、私がいなくなりま…きゃっ!」

 

タッドは、思わずミリアリアを抱き寄せた。
ミリアリアは驚きのあまり、言葉が出ない。

 

 

「私をも、守ると?
私とディアッカに危険が迫れば、身を引くと?」

 

「…はい。その覚悟は常にしています。
ディアッカには内緒にしていますが。」

 

 

ミリアリアは、小さいながらもしっかりとした声で答えた。
オーブや友人や両親も大切だ。それでも。
ディアッカより守りたいものなどミリアリアには存在しないのだから。

 

「それに、ディアッカのお父様は、私にとっても大切な方です。
ディアッカの大切な方なんですから。」

 

タッドは、ミリアリアの細い体を抱き寄せ直して微笑んだ。

 

「…息子を、よろしく頼みます。ミリアリア嬢。」

 

ミリアリアは息を詰めた。
タッドの腕の中で顔を上げる。

 

「エルスマン、議員…」
タッドは満面の笑みを浮かべて、ミリアリアを見下ろした。

 

 

「これからは、おとうさま、と呼んでくれるかな?
もちろん、勤務中は今までと同じで構わないがね。」

 

ミリアリアは、その言葉に花のような笑顔を浮かべた。
それは、タッドをもどきりとさせる、ディアッカが愛してやまない笑顔。

 

「はい、お父様。私の事も、よろしければミリアリア、とお呼び下さい。」

 

タッドはからかうような目をミリアリアに向ける。
「そうしたい所だが…息子が許してくれるかね?」
ミリアリアも笑顔で応じる。
「文句は言わせません。」
タッドは声をあげて笑った。

 

 

「さて、ミリアリア。そろそろかわいそうなうちの息子を仲間に入れてやってもいい頃かね?」

 

ミリアリアは、笑顔のまま頷いた。

 

 

 

016

結局4分割にもなってしまい、すみません…

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2014,6,13up