心臓に絡みつく

 

 

 

 
キラとラクスの再会を見届け、ミリアリアはつい笑みを零していた。
想いを通わせてからずっと戦い続けてきた二人の抱擁は、周囲にいたものたち全ての心を温めてくれて。
ミリアリアはそっと地球にいた頃から愛用しているカメラに指を這わせ、二人の幸せを願った。
 
 
再会もそこそこに、ラクスは停戦条約の締結に向けて閣議に入った。
キラ、そしてマリューやフラガ、バルトフェルドなど各陣営の錚々たるメンバーが居並ぶ中、ミリアリアは目立たない場所に陣取り記録の為にカメラを準備する。
カガリに与えられた報道官の肩書きは、建前だけではない。
ミリアリア自身、この戦争の成り行きを最後まで見届けたかったし、ここにいないカガリにも分かるように、何が起きたかをしっかりと写真に納めなくては、と思っていた。
と、ドアが開き、ザフト側の兵士達が数名遅れて現れた。
ファインダー越しにそちらを向き──ミリアリアの心臓が跳ねた。
 
見慣れぬ黒い軍服。少し伸びた金髪に紫の瞳。
それは、かつて想いを通わせた相手、ディアッカ・エルスマンだった。
 
ひどい喧嘩別れをして以来、もうずっと連絡すら取っていない男。
どうでもいい、と切り捨てていたはずなのに、動悸が止まらない。
わけのわからない感情が心臓に、絡みつく。
いや、わからないなんて嘘だ。
キラとラクスの再会を眺めながら、心の片隅によぎった男の顔。
気づかないふりをしていた感情が溢れてしまいそうなのに、ミリアリアはファインダー越しに見えるディアッカから目を離すことが出来ない。
 
だめ、このままじゃ気づかれてしまう。
そう思うのに、目が離せない。
紫の瞳がゆっくりと視線を巡らせ、ファインダー越しに二人の視線が、合う。
 
 
我に返った時には、カメラはふかふかのクッションの上に転がっており、ミリアリアの体は温かくて逞しい腕の中に囚われていた。
 
 
 
 
 
 
 

 

 

こちらは以前イベントで配布させていただいていたフリーペーパーの再録です。
(すでに配布終了、在庫なしです)
pixivの方にも何か久しぶりに、と思いこちらをupしたので、サイトの方にも載せさせていただきました。
運命終了後の再会シーンです。

きっとディアッカもミリアリアも、少しだけ変わったお互いの雰囲気に気づいて見惚れたと思うんです。
ミリィはぐんと大人っぽくなった(厳しい顔や憂い顔が多かったから余計に)し、ディアッカもまた少年から大人に変わっていましたよね。
だからこそ、再会した時の二人のリアクション、公式で見たかったです…(涙)
でもほら、きっと映画化の時見られるから!←諦めてない

短いですが、楽しんでいただければ幸いです!

 

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2017,10,13up