試し読み Live,Love,Lough,and be Happy!

 

 

 

 

【やけに小さな箱の中身は】(書き下ろし)

 

 

 

 

「ラクス、まだ起きてたの?」
 
バスルームから戻ったキラがそう声をかけると、リビングのソファに座っていたラクスはびくんと肩を跳ねさせ、強張った笑顔で振り返った。
「ええ、ちょっと。キラは先に寝ていて下さいな。お疲れなのでしょう?」
そう返事をしながら、その綺麗な小さい手は忙しなく動き、小さな箱に蓋をする。
 
「うん……でもラクス、明日も早いよね?」
「もう少しで寝ますから。おやすみなさい、キラ」
「う、うん。おやすみ、ラクス」
 
今度はいつもと同じ笑顔でにっこりと微笑んだラクスに、キラは曖昧な笑顔で頷いた。
 
 

翌朝、キラが目を覚ますといつも隣にいるはずのラクスの姿がなかった。
時間に余裕があれば朝食を作ってくれるラクスだが、今日は朝から議会のはずだ。
思い返せば、昨日からラクスは様子がおかしかった。
素早くベッドから抜け出すと、キラはラクスを探すべく寝室から飛び出した。

 
 
「……ラクス?」
 
なんとラクスは昨日と同じ、リビングのソファで眠っていた。
テーブルには白い布切れやビーズ、そして何故か救急箱と絆創膏が乱雑に置かれている。
まさか具合でも、と慌てて駆け寄ったキラの目に飛び込んできたのは──綺麗なレースで縁取られた、リングピローだった。
一粒ずつ手縫いで縫いつけたのだろうパールビーズは、所々少しだけ曲がっているような気がしたが、ほぼ気にならない。
ラクスらしいピンク色のリボンが中心にちょこんと添えられた蓋を開けると、リングを収める部分はロイヤルブルーのビロードで作られていた。
こちらもしっかりと中綿がはみ出さないような処理が施されている。
そして、蓋の内側に目をやったキラは、ふわり、と微笑む。
 
そこには、ラクスが一生懸命刺繍を施したのであろう、ディアッカとミリアリアに贈る祝いの言葉が縫いこまれていた。
 
 
 
 
 
 
 
戻る