好き

 

 

 

 

 

 

このお話はR15要素を含んでいます。

苦手な方は閲覧をお控え下さい。

閲覧は自己責任でお願い致します。

 

 

 

 

 

 

 

 

熱くなった彼自身を受け入れて、ミリアリアの背中が衝撃に跳ね上がった。
意図しない声が唇から零れ、やがてそれは彼の唇の中に飲み込まれて行く。
激しく揺さぶられ、身も心も翻弄され、少しだけ怖くなったミリアリアは目の前の逞しい背中に腕を回すとぎゅっとしがみつく。
大きな手が宥めるように跳ねた髪を撫で、律動が緩やかなものに変わる。
頬に唇を落とされ、腕の中に閉じ込めるように抱き締められるとミリアリアは熱い吐息を漏らした。
どうしてこのひとは、私の考えている事が分かるんだろう。
どうして私は、このひとの腕の中にいるだけでこんなにも安心してしまうんだろう。
 
 
「…やっと、あったかくなってきた」
 
 
緩やかな律動は止めぬまま、耳元で囁かれた言葉にミリアリアは視線だけでその意味を問う。
「指先だけ冷たかった。さっきまで。」
「は、ぁ…え?」
「今日は、やめといた方が良かった?」
ディアッカの視線の先にあるのは、二輪の花が挿さった小さな花瓶。
ミリアリアの大切だった人と、ディアッカの大切な仲間だった人への年に一度の贈り物。
 
 
ミリアリアは紫の瞳を見上げると、ふわりと微笑み首を振る。
「少しだけ…不安になってたの。気を使わせて、ごめんね。」
 
 
何の前触れも無くいなくなってしまった大切な人。
それはきっと、ディアッカも同じだっただろう。
つい数時間前まで目の前にいて、他愛も無い会話をして。
それなのに、もうその人はこの世界のどこにもいなくて、声を聞く事も顔を見る事すらもかなわない。
軍人だから。民間人だから。
そんなカテゴライズなど、現実の前では何の意味も無い。
 
今この瞬間、自分を包んでいる温かなぬくもり。
もし、それすらも消えてしまったら。
ふとした瞬間によぎった思いは、ミリアリアの胸に小さな痛みを残した。
 
 
「俺の事、信じて?絶対にいなくならないから。どこにもいかない。」
 
 
軍人であるディアッカが口にするには拙い約束。
それでもミリアリアには分かる。
彼は、その約束を守る為ならどんな事でもするだろう、と。
そしてそれは、ミリアリアも同じ。
 
「…もっと、して?」
 
小さな小さな声での、懇願。
それをしっかりと拾い上げたディアッカは、柔らかく微笑むと羽のようなキスをミリアリアの唇に落とし、その華奢な体を再び激しく求める。
 
 
どうして、こんなに好きなんだろう。
好きと言う言葉だけでは表現しきれない、ディアッカへの想い。
大好き。愛してる。
どんな言葉をどれだけ伝えても、今ひとつ伝えきれない気がする。
切ない嬌声を上げながら、ミリアリアはうっすらと碧い瞳を開いてディアッカを見つめ、与えられる愛を受け止める。
言葉で伝えきれないのなら、せめてこうして彼をしっかりと見つめていたい。
好きで、好きで。
ディアッカを想うだけで切なくなって胸が痛くなる、と告げたら、このひとはどんな顔をするだろう。
 
 
どうしてこんなに、好きなんだろう。
 
 
説明なんて出来ない、理屈ではないこの感情。
ミリアリアは震える手を伸ばし、ディアッカの額にそっと触れる。
そこにあるのは、かつて二人が出会った時にミリアリアがつけた傷。
絶対に消さない、と言い切ったその傷をミリアリアはそっと撫で、甘い声を上げながら幸せそうな笑みを浮かべる。
同時に自身を締め付けられ、ミリアリアを見下ろすディアッカの顔が切なげに歪んだ。
「ディア…も、わた、し…」
「ん…っ、ミリアリア…」
まるで互いに引き寄せられるかのように、二人は唇を重ね、そのまま昇り詰める。
 
 
「愛してるーーー。」
 
 
ディアッカの掠れた低い声を耳元で感じながら、ミリアリアは自分に覆い被さる逞しい体を抱き締める。
ディアッカもまた、ミリアリアを守るように華奢な体をその胸の中に抱き込み。
ありったけの愛を与えあいながら、二人は同時に果てた。
 
 
 
 
 
 
 
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突然の微裏(微、じゃない?)な突発小噺、いかがでしたでしょうか。
長編に行き詰まり、思いつくがままに書き始めたらこんな感じになりました(恥)
ディアッカの溺愛ぶりばかりをクローズアップしているのですが、ミリアリアも
同じくらいディアッカが大好きなんです。
溢れる想いを言葉では伝えきれないミリアリアの、控えめだけどかわいらしい
愛情表現を書きたくて頑張ってみたんですが…ど、どうでしょう?(大汗
4月ももう終わってしまいますが、トールとニコルの亡くなった月でもあるので
3000hit御礼「夢で逢えたら」のエピソードを絡めました。
後日談、と言ってもいいのかもしれません。

いつもサイトに遊びにいらして下さり、ありがとうございます。
応援して下さる全ての方に、このお話を捧げます!

 

 

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2015,4,25up