互いのすべき事を、今は。

 

 

 

 
「ザフトの機体がエターナルを!?」
 
 
エターナルにいるダコスタからの通信に驚いた声を上げるマリューに、ミリアリアは思わず振り返っていた。
 
 
『はい。どうやら…ザフト内部にも議長のプランに賛同しかねている兵達がいるようですね。
所属等は分かりませんが、量産型の他にパーソナルカラーの機体も数機確認しました。
恐らく操縦しているパイロットの中には隊長か副官クラスの兵もいるものと思われます。』
「彼らはエターナルを援護している。そう取っても構わないのかしら?」
『はい。ラクス様もそのように判断しておられます。』
「そう…。」
マリューの表情が少しだけ緩む。
 
『我々はこのまま進みます。必要があれば彼らにコンタクトを取り、AA側にも…』
「いいえ。その必要はありません。」
 
そのきっぱりとした声に、トノムラがこちらを振り返り苦笑しながら肩を竦める。
ノイマンも、操舵間を握りながらくすり、と笑った。
 
 
「私達は、私達のすべき事、出来ることをします。レクイエムに向かっているのもそう決めたからです。
…大丈夫。こちらにはアカツキもいるわ。ラクスさんに、ありがとうと伝えて下さい。」
『…はっ!それでは…ご武運を!』
「そちらも、ね。後で会いましょう。必ず。」
 
 
ぷつり、と通信が途切れ、ミリアリアは詰めていた息をそっと吐き出した。
ダコスタの言葉を聞いた時、咄嗟に頭に浮かんだ優しい紫の瞳。
ああ見えて思慮深い彼と、実直で聡明な彼の上司であればデュランダル議長のプランに疑問を抱いてもおかしくはない。
だから、もしかしたら……と一瞬思った。
かつてオーブでAAの危機を救ってくれたように、またどこからともなく彼が現れるのではないかと。
AAを、そして自分を守ってくれるのではないかと。
 
 
「…浅ましいったらありゃしないわね、私も。」
 
 
小さな声での呟きに、「ハウ?何か言ったか?」と背後にいるチャンドラが振り返った。
 
「いえ、独り言です。…チャンドラさん。絶対に生きて帰りましょうね。」
「……当たり前だろ。俺たちの戦場はこのシートと目の前のモニタだからな!」
 
頼もしい言葉と表情。
こんな時だと言うのに思わずミリアリアの顔に笑みが広がる。
 
「はい!」
 
ミリアリアはインカムを付け直し、目の前のモニタを凝視する。
 
 
あいつは、きっとこの戦場のどこかにいる。
エターナルの近くかもしれないし、そうでないかもしれない。
何よりあいつは、私がまたAAにいる事など知る由もないだろう。
もしあいつが議長のプランに賛同していれば、自分とあいつは“討つべき敵”として向き合う事になる。
……それでも、今は構わない。
例え近くにいなくても、敵として対峙する事になっても。
互いのすべき事をするのだ、今は。
 
 
「敵機、射程内に入りました!数14です!」
モニタに映った情報を、ミリアリアははっきりとした声で報告する。
 
 
ーーーどうか、あいつが無事でありますように。
 
 
ほんの一瞬だけそう祈り、ミリアリアはこの戦いを終わらせるべくきっ、と前を見据えた。
 
 
 
 
 
  
007
 
 
 
「手を繋いで」直前のお話。
運命終盤のAA内でのひとコマを妄想してみました!
あのシーンで、ディアッカだけでもAAの援護に…!!と思われた方も中には
いらっしゃったのではないでしょうか?←私です(笑)
でも今思えば、ディアッカはエターナルの援護、ミリアリアはAAでそれぞれ戦いに挑む、と
言う図式もアリだったのかな、と個人的には思います。
その後の再会も、もし公式に取り入れられてたら、より感動的と言うか色々と切なく深いものになったのではないでしょうか…。

 

 

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