いつも一緒に 3

 

 

 

それにしても…ディアッカはこんな大切な時に何やってるんだか!
ミリアリアは先程のディアッカの言葉を思い出し、眉間にシワを寄せていた。
 
結婚を前提に…って…
冗談でも言うべきじゃないでしょ、それは!
 
 
ミリアリアとて、嫌だから怒っているのではないのだ。
大好きな人とそうなることを、漠然と考えないわけでもない。
でも、あのように軽く口に出されてしまうと…悲しくなるのだ。
 
出来れば自分にだけ、二人きりの時に…
 
そこまで考えて、ミリアリアははた、と我に返った。
わたし、今なに考えたっ!?
 
 
「ミリィ、どうしたの?」
先程から一人で赤くなったりあたふたしたりしているミリアリアに、キラがきょとんと声をかけた。
「なんでもないっ!は、はやくやっちゃおう?」
カズイを助けるためにも、今はこっち!
ミリアリアは強引に気持ちを切り替えた。
 
 
「さて、やりますか」
サイが、首長服の袖を捲った。
それは、本気の印。
 
「イザーク、あと数時間もしたら君にも手伝ってもらうから。ゆっくりできるの今のうちだけだからね。」
ここ最近、憂い顔ばかりだったキラの久しぶりの軽口。
「なっ…」絶句するイザーク。
「あ、じゃあこの文献読んどいてよイザーク。よろしく。」
サイがどさどさとイザークの前にファイルを積み上げる。
アスランとディアッカにも手伝わせよう…
ミリアリアもそんな事を考えながら、モニタに目をやった。
 
 
 
***
 
 
 
「おーい、誰もいねぇの…ってなんだこれ!?」
結局1時間以上遅れて到着したアスランにぶちぶち文句を言いながら、ディアッカはノックをしても返事のないブリーフィングルームのドアを開け、ひとしきり絶句し、アスランは額に手をやり頭を振った。
 
首長服の袖をフラガばりに捲って、目前に据えられた3台のモニタに膨大な量のデータを出し端末を操作するサイ。
脇にはなぜか、イザークが鎮座し何かに目を通している。
そしてケーブルだらけの床に膝を立てて座り、ラップトップをその膝に乗せレポート用紙にペンでぶつぶつ言いながら何かを書いているミリアリア。
奥の席には、恐ろしい速さでキーボード叩くキラの姿があった。
 
散らばった本、レポート用紙、電卓に手書きの図面。
こいつら、ヘリオポリスではきっといつも一緒にこうやって研究してたんだろうな。
何とはなしにそんなことを考えながら、またも自分の知らないミリアリアがいることを寂しく思う自分にディアッカは気づいていた。
 
 
「遅かったな、アスラン。ご苦労だったディアッカ。」
二人に気づいたイザークがこちらにやってきた。
そんな動きにも、三人は気づいていない様子で作業を続ける。
 
「…この状況を、説明してもらえるか?」
「よかろう。ついでに指示もしてやるぞ?」
 
なぜか上機嫌のイザークに、ディアッカとアスランは首を傾げる。
 
 
「キラがしているのは暗号データの解析だ。カトー氏のそういった癖を一番理解しているのがキラらしい。
サイは解析後のデータを機体ごとに組み直している。
あくまでも組み直しだがな。
これをミリアリアが更に整理し、今あるデータを俺たちにも分かるよう仕上げている。ここまではいいか?」
 
呆気にとられるディアッカとアスランを愉快そうにちらりと見ると、イザークは懐からディスクを取り出しぽんとディアッカに放り投げ、先を続けた。
「サイが新しいデータを持ち込んだ。漏洩を危惧して全てのデータは昨日流さなかったそうだ。
これはあらかた解析が済まされているようだが、フォーマットを繰り返したせいで再度プログラミングが必要だそうだ。
ディアッカ、プログラミングは貴様の得意分野、だったな?」
 
まさか。
 
「俺もやるのかよ!?」
悲鳴に近い声をあげるディアッカに、イザークは淡々と告げた。
 
「この文献、10分以内に目を通して必要な言語を全て暗記出来るなら変わるが?」
そうして見せられた文献には、ディアッカが人生で全く関わったことのない文字が延々と羅列されていた。
 
「なるほど、イザークが適任だな。」
ディアッカの隣から文献を覗き込んだアスランは一人納得したようだ。
 
「お前、これ分かるわけ?」
 
ディアッカが思わずそう言うと、アスランは首を横に振った。
「人類がやっと地球の色を知った時代の言葉だよ、確か。知識としては知っているが、解読は出来ない。イザークの範疇だな。」
「ああ、イザークこういうの大好物だもんな…」
「分かったらとっとと働け!」
 
 
そうしてイザークはサイの、アスランはキラのサポートに徹する。
コーディネイターでも特に優秀な彼らは、与えられた役割を即座に理解して動いていた。
そして、ナチュラルであるミリアリアとサイもまた、その稀有な才能を充分に発揮していた。
自分には何が出来るだろうか。
ディアッカの心にまた、隙間風が吹き荒れる。
 
「さて、と…」
 
そんな思いを振り払い、ディアッカは空いている端末を探して部屋を見回す。
するとミリアリアが膝元のモニタから目を離さず、自分の横のデスクを軽く叩いた。
 
「ディアッカ、ここ空いてる。」
 
見ていないようで、どうやらミリアリアはしっかりディアッカの事を気にかけていてくれたらしい。
そう思うと、先程までの寂寥感はあっという間に消えた。
そして、なんだかとても幸せな気持ちになって。
「…サンキュ」
「ん。」
素っ気ない返事。
だが二人の心は通じ合っている。
ディアッカはミリアリアの横のデスクに腰をおろし、早速ディスクを端末へ差し込んだ。
 
 
 
 
 
 
 
016

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2014,6,10up