「ねぇねぇアスラン、ハロウィンって、なに?アスラン知ってる?」
そう言って首を傾げるキラに、アスランは読んでいた本から顔をあげた。
「…地球が発祥の、毎年10月31日に行われるお祭りのこと。かなり昔からある祭りで、もともとは秋の収穫祭らしいけど、今は本来の意味合いはほとんどなくなっている。」
「…うん」
半分以上、何を言ってるか分かりません、といった表情のキラに、アスランはぱたんと本を閉じた。
「カボチャの中身をくりぬいて“ジャック・オー・ランタン”を作って飾ったり、子どもたちが魔女やお化けに仮装して近くの家々を訪れてお菓子をもらったりする風習があるんだ。
…こないだ、先生がカボチャで何か作ってただろ?あれだよ。」
その言葉に幼年学校で見かけた光景を思い出し、キラはぱぁっと笑顔になって頷いた。
「そっか!そう言えば先生、何かパーティーするって言ってたよね!アスラン、一緒に行こうよ!」
目を輝かせるキラに、アスランはすまなそうに微笑み首を振った。
「うん…でも、その日は乗馬のレッスンなんだ。父上も来るから、さすがに休めないよ。
キラ、ごめん。」
アスランの父、パトリック・ザラの厳格さはキラもよく知っていた。
キラの両親がナチュラルという事で、二人の親密ぶりを内心良くは思っていない事も。
「そっか…分かったよ、アスラン。僕もごめんね。
あ、でもお菓子貰ったらさ、アスランの分もちゃんと別にしておくからね!」
「…うん」
がっかりしたのを極力顔に出さないよう努力しているのが丸わかりの、優しいキラ。
アスランもまた、それに気付かないふりをしてキラの目の前のノートを指でつんと突く。
「ほら、宿題終わったのか?早くすませないと遊べないぞ?」
「え?わ、ちょ、ちょっと待って!今やるから!」
ころりと表情を変え、慌ててノートと教科書にかじりつくキラの姿に、アスランはふわりと笑った。
***
オーブ軍本部内に併設されている、ザフト軍オーブ駐屯部隊の隊長室。
アスラン・ザラは山積みになった書類に目をやり、ふぅ、と溜息をついた。
先の大戦からこんな業務を続けて来たのであろうイザークとディアッカに、尊敬の念を覚える。
「平和になって来た、証なんだろうけどな…」
時計に目をやれば、時刻は既に23時を回っていた。
そして、その下の日付に目をやり、アスランはコペルニクスでのキラとの会話を思い出し、くすりと笑った。
「ハロウィンも…あと1時間でおしまい、か。」
幼年学校時代、ハロウィンを知らなかったキラは、当日教師の作ったジャック・オー・ランタンに腰を抜かすほど驚いていた。
後で聞いた所によれば、しばらく夢に出て来てうなされたそうだ。
あれの何がそんなに怖いのか、アスランにはさっぱり分からなかったが、人にはそれぞれ苦手なものがあるのだろう。
ーーープラントでは、どんなハロウィンが行われているのだろう。
激務に追われるキラの恋人、ラクスだが、その実楽しいイベントには目がない事をアスランは知っていた。
そして、彼女の側近である“砂漠の虎”もまた同じである事。
この歳になれば、さすがにカボチャごときでどうこうならないだろうけどな。
そんなことを考え、つい書類をめくる手を止めていたアスランの耳に元気の良いノックの音が飛び込んで来た。
こんな時間に…誰だ?
驚いたアスランは、緊急事態かと慌ててドアに向かう。
「誰だ?」
ドア越しに問いかけるも、返事は無い。
その代わり、再びコンコン!とノックの音が響いた。
その音は、心持ち先程より強くなっている。
まさか…。
アスランは、思い切ってドアのロックを外す。
するとーーーばん!とドアが開き、黒とオレンジのかたまりが部屋に飛び込んで来た。
ーーー正しくは、アスランの胸に。
「Trick or Treat!!」
そう言ってアスランを見上げ、満面の笑顔を浮かべるオーブ首長連合国代表、カガリ・ユラ・アスハをアスランはぽかんとした顔で見下ろし…そして、声を上げて笑い出した。
「なんだよ!笑うとこじゃないだろ?」
「いや…ごめん、びっくりして」
目に涙を溜めてなおもくすくすと笑うアスランに、カガリは憤慨した表情を向けた。
そっと肩に手をかけて胸からカガリを離し、その出で立ちを上から下まで眺める。
「どうだ?大人っぽい魔女だろ?」
カガリの格好は、黒いすとんとしたミニ丈のワンピースに膝まである黒いブーツ。
ブーツは膝の所で折り返されており、裏地のオレンジが目を引いている。
てっぺんが尖った帽子も、つばの裏側は同じくオレンジ色をしており、どうやらジャック・オー・ランタンを意識したデザインのようだ。
確かにスカート丈だけ言えば、大人っぽい、というかむしろ…扇情的な魔女?
内心そう思ったアスランだが、それを口に出せるほど彼は器用ではなかった。
「もう20歳超えてるんだから、そろそろ落ち着けよ、カガリ」
「イベントを楽しむ心の余裕も、為政者には必要だ!」
褒めてもらえると思っていたのか、アスランの言葉にぷぅ、とむくれるカガリ。
「で?アスランは私に何もくれないのか?キサカはキャンディーをくれたぞ?」
キサカさんの所にも行ったのか…。
アスランは、キサカの心労を思って遠い目をする。
「アースーラーン?」
にじり寄るカガリに、アスランはちょっと待ってて、と執務机に戻り、引き出しからチョコレートを出した。
「カガリ、疲れてるだろ?だからこれ、買っておいたんだけど…子供っぽかった、かな?」
縞模様の包み紙がかわいらしいチョコレート達に、カガリは目を丸くしてアスランを見上げる。
「次に会った時に渡そうと思ってたんだけど…ちょうど良かった」
そう言ってふわりと微笑むと、カガリの顔が赤くなる。
「カガリ?チョコ嫌いだったか?」
その反応に首を傾げるアスランに、カガリはぶんぶんと首を振った。
「い、いや、その…ありがとう…。」
互いに激務続きの二人がゆっくり会える事など、月にそう何度も無い。
せいぜい、合同で行われる協議の席で顔を合わす程度がほとんどなのに。
それでも、自分の様子をしっかりと見ていてくれた事が、カガリはひどく嬉しかった。
「……でもこれだけじゃ、確かに子供騙しだな。」
「え?」
アスランはチョコを手に乗せたままきょとんと自分を見上げるカガリを抱きよせ、唇を寄せる。
「…明日、何時に行政府?」
「…11時、だけど…この状況で聞く事か?」
「何時にカガリを送ればいいか、確認したまでだよ」
唇が触れる寸前の距離での、会話。
カガリは不意打ちのように、自分からアスランの唇に自分のそれを重ねた。
「…これで、今回は許してやる」
そう言って、琥珀色の瞳を潤ませながらいたずらっぽく笑うカガリ。
アスランはたまらずカガリをきつく抱き締め、今度は自分から、腕の中の愛しい宝物に深いキスを送った。
![]()
突発もいいところ、降りてきたネタをざばざばっと書き上げたハロウィン話@2014!(笑)
まずは、アスカガでお届け致しました(●´艸`)
と言うか私、アスカガだけでこんなに書くの初めてかも!!
鈍感アスラン(ファンの方ごめんなさい;;)らしからぬ大人な振る舞いに、書いてる私も
びっくりです(笑)
でもほら、それ相応に年を重ねてるしね(笑)
とにもかくにも、皆様にお楽しみ頂ければ幸いです!
ハロウィンネタ2014ver,は、お題サイト様からお借りしたお題を元に作成して参ります。
さて次は、誰が登場するのでしょうか…(●´艸`)
2014,10,31up
配布元 お題配布サイト「TOY」