ベッドの軋む感覚に、イザークはうっすらと目を開けた。
カーテンの隙間から差し込む光に目を細める。
隣に眠っているはずのシホに手を伸ばすと、そこは温もりだけを残し空っぽになっていた。
微かに聞こえた衣擦れの音に、イザークの視線が彷徨う。
アイスブルーの瞳に映ったのは、ぶかぶかのシャツから伸びた細い足。
視線を上げると、足音を忍ばせキッチンに消えて行くシホの後ろ姿が目に入った。
横着者め。人のシャツを勝手に羽織りやがって…。
昨晩自分がその辺に脱ぎ捨てた事は棚に上げて、イザークはそんな事を思いくすりと微笑む。
二人が恋人同士になってから、来月でちょうど1年2ヶ月。
イザークがこの部屋で朝を迎えるようになって、およそ3ヶ月が経とうとしていた。
かつてイザークを狙っていた暴漢によって起こされた事件で心に深い傷を負ったシホ。
イザークは、自分から離れて行こうとしていたシホに想いを告げ、シホもまたそんなイザークの手を取った。
晩熟なイザークと、真面目なシホ。
そんな二人が恋人同士になり、今のような関係になるまではいくつもの紆余曲折があった。
イザークは焦る事なくゆっくりとシホの心を癒して行き、シホもまたゆっくりとではあるが、そんなイザークを受け入れていった。
未だに慣れないらしい、「イザーク」という呼び方。
おずおずと、自分の背中に回される腕。
怖がりながら、それでもイザークを求める薄紫の瞳。
少しずつ、狭まって行く二人の心の距離。
触れるだけのキスから、深いキスを交わすようになった時の事を今でもイザークは手に取るように思い出せる。
これが、愛しい、という感情なのか。
ディアッカがあれだけミリアリアを想い続け、ついには自分の婚約者としてプラントに連れ帰った気持ちが、今のイザークにはよく分かった。
結婚しても全く変わらず、ミリアリアに対する溺愛ぶりを見せる親友の姿を思い出し、イザークはまたくすりと笑みを浮かべる。
きっと今では、あいつの目にも、自分は同じように映っているだろう。
キッチンから、冷蔵庫の扉を閉める音が聞こえる。
大方、喉でも乾いたのだろう。
そう思った瞬間、自身も喉の渇きを覚えイザークはゆっくりと起き上がる。
そろそろ、シャツを返してもらおうか。
イザークはそっとベッドから抜け出すと、そばに落ちていた衣類を身に着けてそっとシホの元へ向かった。
『シャツ』のイザーク視点。あちらでは明記していませんが付き合って1年2ヶ月だそうです。
シホへの愛情の深さが伝わってくる…といいなぁ(笑)
そう言うのが伝わる話が書けるようになりたいです!
2014,7,18拍手小噺up
2014,8,12up・タイトル変更
2015,5,22up・改稿