シャツ

 

 

 

 
喉の渇きを覚え、シホはゆっくりと目を開けた。
カーテンの隙間からは、うっすらと朝の光が差し込んでいる。
時計を見ると、午前5時を少し過ぎたところ。
これならもう一眠り出来るかしら、と思いながらもシホはゆっくりと体を起こし、隣に眠る人物が目を覚まさないようそっとベッドから抜け出した。
 
 
キッチンに向かって歩き始めたところで、自分の格好に気づく。
さすがにこれはまずいだろう…そう思い辺りを見回せば、昨晩脱ぎ捨てられたシャツが床に落ちているのを発見した。
とりあえず、これでいいか。
一糸纏わぬ裸身にシャツを羽織り、簡単にいくつかの前ボタンをとめる。
男物のシャツはぶかぶかで、シホの腿が半分も隠れてしまうほどだ。
ひとまず喉の渇きを潤して、それからどうするか考えよう。
 
シホは再び足音を殺してキッチンに向かい、冷蔵庫に常備してあるアイスティーをグラスに注ぐと一気に飲み干した。
ふぅ、と息をつき、シンクにグラスを置いた、その時。
 
 
「俺ももらおうか」
 
不意に後ろから抱きすくめられ、耳元で掠れた声が響く。
「きゃ…!あ…すみません、起こしてしまいましたか?」
シホは慌てて振り返りーー自分の格好を思い出してみるみる頬を紅潮させた。
 
「ああああのっ!今用意します!だから少しだけ向こうで…」
しかし、シホに回された腕は緩まない。
「…あ、の…?」
「…アイスティーはとりあえず後だ。」
ぐい、と肩をつかまれ体を反転させられる。
「え?」
「…なかなか似合っているな。」
驚いて顔を上げたシホの唇に、柔らかい唇が落とされた。
 
 
「まだ時間はあるだろう?」
 
 
その言葉が何を意味するかを理解し、シホはおずおずと目の前の体に腕を回した。
「腕は、俺の首に回せ。これでは抱き上げられないだろうが。」
「…え?あ、ちょっ…え?」
言われるがままに腕の位置を変えると、あっという間に抱き上げられ、さっきまで眠っていたベッドに運ばれる。
 
「シャツ…脱がないと…」
「そのままでいい。」
 
簡潔な返事とともに、器用な指先がシャツのボタンを外し始める。
「隊長!ダメです!シャツがしわに…」
「二人の時は?」
アイスブルーの瞳が細められ、シホは困ったように目を泳がせた。
出勤時間までの二度寝は、諦めるしかなさそうだ。
 
 
「イザーク…シャツが…」
 
 
ボタンを外し終えたイザークは、その恥ずかしそうな声にくすりと微笑み。
自分の名を紡いだ、桜色に染まる唇をそっと塞いだ。
 
 
 
 
 
 
 
007

あの事件からどのくらい経った二人でしょうね、これは…

イザークの優しさがシホの心を癒し、その結果こんな素敵な朝を

迎えるような関係になれたんじゃないかと思います。

 

 

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2014,7,18拍手小噺up

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