アルバム

 

 

 

 

「あれ、これ…」
「ん?なに?」
 
 
オーブの両親が送ってくれた荷物を整理していたミリアリアが声を上げ、ディアッカはその手元を覗き込んだ。
「なにこれ?アルバム?」
そう言って、ひょい、とアルバムを取り上げ、ぱらぱらとページを開く。
「ちょっと!何見てるのよ!」
顔を赤らめたミリアリアが声を上げるが、ディアッカはぴたりと手を止め、あるページにじっと見入っていた。
 
 
「これ…だれ?」
「は?」
 
 
ミリアリアがページを覗き込むと、そこには子供の頃の自分が写っている写真が数枚貼られていた。
「私…だけど?」
不思議そうに答えるミリアリア。
ディアッカは、アルバムを脇に置くとミリアリアの髪に手を伸ばした。
「お前、昔からこの髪質?」
「そうよ?何突然言い出して…」
「だってさ、これ見ろよ!」
 
 
そういってディアッカが指差した写真のミリアリアは、見慣れた肩までの長さでなく、胸近くまで伸ばしたふわふわの髪をリボンで結んでいた。
 
 
「ああ…小さい頃はお母さんの好みで髪長くしてたのよ。
でも、癖が強くて自分じゃまとめるの面倒だったし、最近はもうずっとこの長さかなぁ。」
「いや、そうじゃなくてさ。何このクルクルした髪型?」
 
 
そう、写真のミリアリアは、まるでセットしたような綺麗な巻き毛だった。
「え?だって私、癖っ毛だから…」
「そっか、外に跳ねてるんだからこのまま伸ばせばこういう風になる訳だよな…」
なおもぶつぶつと呟くディアッカは、ミリアリアの目が眇められたことに気がつかなかった。
 
 
 
「…そうね、そうなるわね。絶対伸ばさないけど!」
 
 
 
ぷい、と横を向くミリアリア。
「ミリィ?何怒ってんだよ?」
「…巻き毛が好きだものね、ディアッカは。これで金髪だったらビンゴだったんじゃない?」
 
 
 
 
あ、やべぇ。
 
 
 
 
ディアッカは、地雷を踏んだことにようやく気づいた。
以前ミリアリアにちょっかいをかけてきた昔の女が金髪の巻き毛だったことを思い出したのだ。
 
 
「いや、あの、ミリィ…」
「なによ?!」
「…やきもち、焼いてくれてる?もしかして。」
そっぽを向くミリアリアの耳が、その言葉に赤くなったのが分かる。
「ぜんっぜん!焼いてなんかいないけど?!」
そう即答して立ち上がるミリアリアを、ディアッカの腕が絡めとる。
「ちょっと!何するのよっ!」
あっという間にラグの上に座るディアッカに抱き寄せられ、ミリアリアは抗議の声を上げた。
足をしっかり絡められてしまい、ミリアリアは身動きが取れない。
 
 
「意地っ張り」
 
 
耳元で囁かれて、ますますミリアリアの顔が赤くなる。
「ちがっ…」
「俺が好きなのは、巻き毛でも金髪でもなくてミリアリアなの。
俺、お前のこの髪すげぇ好きだぜ?柔らかいし、何よりお前に似合ってる。」
「…じゃあ、なんであんなに、あの写真…」
ディアッカはミリアリアの顔を自分に向けさせる。
 
 
「髪の長いお前を知らなかったから、びっくりしただけ。
だから、そんな怒んなよ。」
そう言って、ちゅ、と唇を落とすと、頬を赤らめたミリアリアが上目遣いでディアッカを睨んだ。
「…怒って、ないってば…。」
ああ、ほんとに意地っ張りな俺の婚約者。
ほんとは嫉妬して、怒ってたくせに。
でもそこが、たまらなく愛しいと思ってしまうのは俺がどこかおかしいんだろうか。
 
 
「お前、ほんと俺のこと好きだろ?」
 
 
額をくっつけてそう問いかけると、ぐ、と言葉に詰まったミリアリアが碧い瞳を揺らめかせる。
 
 
「…好きよ。悪いっ?」
 
 
 
ああ、やっと素直になった。
 
 
 

「よく出来ました。」
 
ディアッカはクク、と笑うともう一度、今度は深くミリアリアに口づけた。
 
 
 
 
 
 
 
007

いや…甘くて自分でもびっくりです(笑)

「心を重ねて」のラストから「空に誓って」までの間くらいのエピソードでしょうか。

実は結構ヤキモチ焼きなミリィと、ちょっぴり俺様モードなディアッカ。

二人にはいつまでも、こんな風でいてほしいです。

 

text

2014,6,25 拍手小噺up

2014,7,18up