Please Keep holding my hands -どうかその手を離さないで-

 

 

 

 
 
「ミリィ。名前、呼んで。」
「…ディアッカ」
「もっと」
「ディアッカ」
「もっと」
「…どうしたの?ディアッカ。」
 
 
ディアッカは答えず、ミリアリアの柔らかい髪に顔を埋める。
 
 
「ディアッカ?」
「…手。かして。」
そう言いながら、ミリアリアの返事を待たずにディアッカはその小さな手を握り締める。
ミリアリアは自由になる方の手で、ディアッカの髪をそっと撫でた。
 
 
「…お前は、いなくならないよな?俺のそばから。」
小さな、声。
ミリアリアはくすりと笑った。
「いなくならない。ずっとそばにいるわ。」
「…うん」
「ここにいるから、安心して?どこにも行かないわ。」
「…ん…」
 
 
ミリアリアは黙ってディアッカの髪を撫で続ける。
ほどなく、規則正しい息遣いが聞こえてきた。
どうやら、眠ったらしい。
 
 
「…コーディネーターでも、やっぱりこういうときは心細いのかしら」
ディアッカの頭をそっと枕に戻しながら、ミリアリアはついそう呟いた。
冷たい水で絞ったタオルを額に乗せる。
 
 
 
連日の激務で睡眠不足が続いていたディアッカが、勤務中に倒れたと知らせが入ったのは半日前。
ミリアリアの待つ自宅に、イザークとキラによって送り届けられたディアッカは、過労のせいで発熱していた。
免疫力の高いコーディネーターであるディアッカが熱を出すほどだ。
本当に忙しく、そして疲れも溜まっていたであろうにそれを見せないディアッカにミリアリアは呆れ、苦笑する。
 
 
意地っ張りなのは、お互いさまなのよね。
 
 
熱と寝起きで朦朧とした中でしか本当の意味で甘えてこない、ミリアリアの大切な恋人。
次に目が覚めた時ディアッカはこの事を覚えていないだろう。
覚えていたとしても、きっと惚けるはず。
それでもいい、とミリアリアは思いながら、ディアッカに握られたままの手をそっと動かし、指を絡め直す。
ディアッカが、少しでも、安心して眠れるように。
 
 
「大好きよ、ディアッカ。」
 
 
耳元でそう囁くと、ディアッカが少しだけ微笑んだ気がした。
まだ、体も熱く熱も下がる気配がない。
ミリアリアは、ベッドの脇に座り込み、眠るディアッカの唇にそっと自分のそれを重ねる。
そして、そのまま枕の横に頭を置いた。
次に目が覚めた時、少しでもディアッカが安心できるようにと願いながら、目を閉じる。
 
 
繋いだ手は、そのままで。
もう、離さない。
離れない。 
 
 
 
 
 
007
 
コーディネイターだって、熱とか出すんです。
疲れ切ったディアッカがつい見せた脆い心の内を、優しく包み込むミリアリアの愛情。
 
 
2014,5,31拍手小話up
2014,6,26改稿 up