1,ディアッカ・エルスマン

 

 

 

 

2度目の大戦が、ようやく終結の兆しを迎えた。
 
「イザーク、ミネルバのパイロットたちはアスランが収容したってさ!」
 
土壇場でエターナルの援護にまわると決断した、幼馴染でもある隊長にまずはそれだけ報告する。
 
「ボルテールは指示した位置から動いてないんだろ?俺たちはどうする?そろそろ補給…」
『こちらはエターナル、ラクス・クラインです。イザークさん、ディアッカさん、聞こえますか?』
 
 
一瞬、呆然とする。イザークも同様だろう。
停戦の言葉から、まだ十五分も経っていない。
つい先程まで敵であった自分達の回線コードをなぜラクス達が把握しているのか、とか。
この状況の中おっとり優しげな口調とともに、『お久しぶりですわ』などとふんわりとした笑顔を向けられたりとか。
呆然とする要因はたっぷりとあるわけで。
だがイザークは、言わずとしれたラクス・クライン信奉者。
咄嗟に言葉が出なかったディアッカを尻目に、やや上ずった口調でモニタ越しの会話をどんどん進めていた。
 
『プラント側でも、間もなく正式に停戦の声明が出されるでしょう。それまでの間、よろしければクサナギかAAで補給を受けられてはいかがですか?』
行き先が決まればわたくしもそちらに伺いますから、少しお話いたしましょう?とにっこり提案されれば、ディアッカはともかくイザークに断る理由はない。
エターナルはザフトの艦、とこの隊長は言い切ったのだから。
 
 
『ああ、少し待ってくださいね…クサナギはすでに救難信号を出していた皆様でいっぱいなようですの。AAに着艦していただけますか?』
 
 
あちらにはわたくしから伝えておきますわ、との言葉を最後に、通信は切れた。
「歌姫の命なら仕方ない、行くぞディアッカ!」
「…りょーかい」
内心の動揺を隠して、ディアッカは懐かしい艦に機体を向けた。
自分の根幹を変えた、運命の大天使。
初めて守りたいと思った、碧い瞳の少女と出会った艦。
一度腕の中に捕まえた少女は、今はもうどこにいるかもわからないけれど。
戦場カメラマンなどというものを目指して、腕の中から飛び出して行った彼女。
彼女の存在があったから、今のディアッカ・エルスマンがある。
 
 
「もう、忘れるって決めたんだけどな…ちくしょう」
 
 
私だって、私のやり方で戦いたいのよ!
トールの、フレイの死を無駄にしたくない!
邪魔しないでよ!
 
 
彼女が口にした拒絶の言葉。
ディアッカは悟ったのだ。
自分は、彼女にとって重荷でしかない、と。
好きで、好きで、ただ守りたくて。
彼女がいれば、他に何もいらなかった。
でも、忘れるのだ。
彼女の幸せを願うなら。
 
『ハッチ解放します。着艦どうぞ!』
 
聞き覚えのある声が、着艦許可を告げた…。
 
 
 
 
 
 
 

016

destiny終了直後から物語は始まります。

ミリアリアがいるとは知らず、AAに向かう事になったディアッカ。

この後、二人は再会します…

 

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2014,5,31up

2014,7,31 コメント追加

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