コロニー・メンデルでイザークと再会した。
言葉を尽くして自らの思いを伝えたが、最後までイザークは自分に銃を向けていて。
伝えきれなかった悔しさに加え、旗艦であったヴェサリウスが沈む様を目の当たりにし、いつになく弱気になっていた自覚はあった。
戦闘後、食堂でぼんやりしていたディアッカの前に現れたのは他でもない、ミリアリアで。
何も言わず差し出された熱いコーヒーに視線を上げると、泣きそうな顔がそこにあった。
「辛い時は、口に出さなきゃダメなのよ」
「うん」
「あんた、平気そうな顔してめちゃくちゃ色々溜め込むんだから。そんなんじゃ発進許可、出せないわよ」
「ああ」
「ちゃんと戻ってこられるの?そんな状態でもし出撃許可が出たら……」
「そうだな」
「……ばか」
ぼんやりしていたディアッカは、唇に触れた柔らかいものが何なのか最初はわからなかった。
ゆっくりと我に返ると、至近距離にミリアリアの碧い瞳があって、ひどく驚いた。
そのまま手を引かれ、自分にあてがわれた部屋に到着し、乾いた空気音とともにドアが閉まった瞬間。
ディアッカはミリアリアの細い体を抱きしめていた。
「メンデルで…仲間に会った。……銃を向けられた」
「そう」
「こないだまで俺がいた艦が、沈んだ」
「そうね」
「艦橋にアデス艦長がいて…敬礼、してた」
「うん」
真っ暗な室内で、ディアッカの声だけがやけに大きく響く。
「この戦争を止めたい。ただそのことを伝えたかった。でも、出来なかった」
「…簡単なことじゃないものね」
「アデス艦長は……なんで敬礼なんかしてたんだろう、って考えてた。俺もアスランも、艦長からすりゃ裏切り者なのに」
「……想像でしかないけど、その人はあんたたちを一人の軍人として認めていたから、だと思う」
「一人の軍人…」
ディアッカはアデス艦長の人柄を思い出そうとしたが、うまくいかなかった。
それはそうだろう。あの当時の自分はエリート意識に凝り固まり、ごく僅かな仲間を除き周囲を見下していた。
ナチュラルに対して感じていたものと種類こそ違ったが、真正面から向き合ったことなど、無かった。
だが艦長は、違ったのかもしれない。
赤服を纏った新兵でも、クルーゼのような歴戦の兵士でも、命の価値は同じだと今のディアッカならば思う。
もし艦長も、そう思っていたのだとしたら──
そこまで考えた時、ディアッカは腕の中にいるミリアリアの体が熱を帯びていることに気づいた。
訝しく思い視線を落として──絶句する。
腕の中でうつむくミリアリアの碧い瞳からは、幾筋もの涙が零れ落ちていた。
「……なんでお前が泣くんだよ」
「……泣けないあんたの代わりに泣いてやってるのよ。黙って、付き合いなさいよ」
「……お人好し」
「……誰にだってこんなことするわけじゃないわ」
ぽつり、ぽつりと交わされる短い会話。
──誰にだってこんなことするわけじゃない──
その言葉が何を意味するか分からない程ディアッカは鈍感ではなくて。
「わかった。…サンキュ」
小さく囁き、そっとミリアリアの体を離して身をかがめる。
そして、ついさっきされたようにそっと唇を重ねると、細い腕がディアッカの背中に回された。
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捏造妄想大爆発のメンデルシーン。
決定打はないけれど、互いの想いに気づいている。そんなディアミリです。
ちょっと弱気なディアッカと、決して強くはないけれどそれを支えるミリィを
書きたいなと思って出来たお話です。
2016,7,21up